2026年10月09日掲載

BOOK REVIEW - 『逸脱させるマネジメント 1人ひとりの「はみ出し」を育て、組織の成長に変える技術』

石山恒貴、伊達洋駆 著
法政大学教授、株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役 
日本能率協会マネジメントセンター 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 多くのマネジャーがメンバーの新しい挑戦をつぶしてしまう。それは、決して悪意があるからではなく、「逸脱」を修正すべきエラーとみなし、従来のマネジメントの手法を使って正解へと引き戻そうとしてしまうからだ。しかし、その人独自の強みを発揮するためには、定められた道筋からあえて逸脱してみることが必要である。本書では「逸脱させるマネジメント」を、メンバーの強みを感知し(Sense)、逸脱に挑戦するよう鼓舞し(Try)、才能を爆発的に開花させる(Grow)ことで、組織の現状と暗黙の前提を創造的に破壊するマネジメント――と定義し、これを「STGモデル」と称している。

■ 第1・2章は、なぜ組織に「逸脱」が必要なのか、なぜ組織は逸脱させない仕組みを精緻につくり上げてしまったのかが論じられている。第3・4章は、現場のマネジャーが使える「逸脱させるマネジメント・10の実践スキル」を提示した上で、現場で起きがちな七つのシーンごとの「要注意ワード」と、メンバーの可能性を広げる「推奨アプローチ」を紹介する。第5章はドラッカーのマネジメント、ミンツバーグのアート・サイエンス・クラフト等の理論に基づき、体系化したSTGモデルについて解説する。第6章は、組織において「強みフォーカス」(自分や他者の独自の強みにしっかりと目を向け、遺憾なく発揮または発揮できるよう支援していくこと)をどのように実現していくかが述べられている。

■ 逸脱させるマネジメントを実践する者を「伴走者」と呼ぶ。組織に伴走者が当たり前に存在すること、強みフォーカスが新たな組織文化として定着することが本書のゴールであり、第7章(付録)ではそれを定着させるための4段階のモデルが示されている。組織のメンバーにもっと創造的に働いてもらいたいと考えるマネジャーだけでなく、逸脱するメンバー自身にとっても参考となる一冊である。