代表 寺澤康介
(調査・編集:主席研究員 松岡 仁)
ProFuture代表の寺澤です。
2026年4月6日、パーソルキャリア株式会社が運営する調査機関であるJob総研は、「2026年 新卒の給与に関する意識調査」(調査期間:2026年3月18〜23日、有効回答数:302人)の結果を発表しました。近年、新卒採用の競争激化を背景に、新卒初任給の引き上げ合戦の様相を呈していますが、既存社員との給与逆転現象が生じているケースもあります。同調査では、新卒初任給の引き上げの必要性について、「人材確保」「物価上昇」などを理由に、「必要だと思う派」が78.2%と8割近くに達したものの、いざ新卒者の初任給が自分の給与を上回った場合には、「不公平を感じる派」が87.5%と9割近くを占めるとともに、転職を「検討する派」が72.2%と7割を超える結果となりました。このことから、給与逆転現象が生じると、既存社員のモチベーション低下は避けられないといえます。新しい社員を採用できても、戦力となっている既存社員を失っては本末転倒です。新卒初任給の引き上げ額を検討するに当たっては、既存社員が納得できる給与バランスを考慮することが必要不可欠であることを改めて示した調査結果だといえます。
8割の学生が初任給額を重視
今回は、HR総研が就活口コミサイト「就活会議」と共同で、2027年卒業予定の同サイト会員学生を対象に実施した「2027年新卒学生の就職活動動向調査(3月)」(調査期間:2026年3月5~16日)の結果から、2026年3月初旬時点の就職意識とインターンシップへの応募状況について取り上げます。
※以下、同調査結果の割合(%)は、小数点以下を四捨五入して整数で表示しています。
そのため、合計が100%にならない場合があります。
まずは、冒頭でも取り上げた新卒採用者の初任給引き上げに関連して、就活生は企業選択をする上で初任給額をどの程度重視しているのかを確認します。文系では「少し重視している」が最多で44%、「とても重視している」も41%で、これらを合計した “重視する派” は85%と大半を占めます[図表1]。
一方の理系では「少し重視している」が50%、「とても重視している」も29%となり、“重視する派” は79%と文系よりは少ないものの、ほぼ8割となっています。「あまり重視していない」と「まったく重視していない」を合わせた “重視しない派” は、文系・理系ともに6%にすぎません。企業が初任給の引き上げに注力するのも当然といえます。
[図表1]文理別 企業選択をする上での初任給額の重視度

資料出所:HR総研×就活会議「2027年新卒学生の就職活動動向調査(2026年3月)」([図表2~7]も同じ)
では、就職活動している大学生が初任給額として望ましいと考える金額はいくらなのでしょうか。大学区分別に比較してみると、「旧帝大クラス」「早慶大クラス」「上位国公立大」では「20万円以上」「22万円以上」との回答はゼロで、最低が「25万円以上」となっています[図表2]。その他の大学区分では「20万円以上」と「22万円以上」のどちらも選択されており、「その他私立大」では「20万円以上」が13%、「22万円以上」の18%と合わせると3割を超えています。上位の3区分の大学層とは明らかな差異が見られます。
「20万円以上」~「25万円以上」を合計した “控えめ派” の割合が最も高いのは「その他私立大」の57%に及ぶのに対して、最も低い「旧帝大クラス」では10%にとどまり、その差は47ポイントにもなります。逆に「30万円以上」~「40万円以上」を合計した “高額派” の割合が最も高いのは「旧帝大クラス」で、50%とちょうど半数を占めるのに対し、最も低いのは「中堅私立大」の20%、次いで「その他国公立大」の21%となっており、約30ポイントの開きがあります。「40万円以上」を選択した学生は「旧帝大クラス」~「上位私立大」には数%いたものの、残りの大学区分では一人もいませんでした。大学区分によって志望する企業群の業種や企業規模に違いがあり、それにより初任給の希望額にもこれだけの開きが生じているものと推測されます。
[図表2]大学区分別 望ましい初任給額

時間・休暇が気になる「働き方」
次に、企業が実施している社員の働き方に関する環境整備において、学生が気になる項目(複数回答)を聞いたところ、上位3項目は文系・理系ともに全く同じで、1位は「長時間労働の是正」(文系63%、理系64%)で6割を超え、2位「有給休暇の取得促進」(同58%、59%)、3位「フレックスタイム」(同50%、55%)と、時間や休暇に関する項目が上位を独占しました[図表3]。これまで、学生時代の研究室における長時間に及ぶ実験や研究の経験から、理系は文系と比較して時間に対する関心度は比較的低い傾向がありましたが、今回の結果を見る限り文理差はほとんど感じられません。かつての理系学生の就活における特徴の一つであった「大学・教授推薦による応募」は年々減少し、文系と同じ自由応募が中心となるなど、就職活動自体の変化に合わせて、理系の就職意識も文系に近いものになってきているのかもしれません。
文系と理系で違いが明らかなのは「兼業・副業の解禁」で、文系21%に対して理系12%と10ポイント近い差が生じています。文系のほうが理系より、就職後の兼業・副業を考えている学生が多いということなのでしょう。その他、「仕事と家庭の両立支援制度」(同39%、32%)および「育児休暇取得率の向上」(同24%、18%)にも文理差が少し見られます。ただし、これら2項目の回答結果については、今回の調査の全回答者に占める女子学生の割合の違いが影響しているものと考えられます。近年、理系の女子学生は増加傾向にあるとはいえ、全体に占める割合は文系と比べるとまだまだ低いと言わざるを得ません。一部の設問の回答には、その影響が少なからず出てしまいます。
[図表3]働き方に関する環境整備において気になる項目(複数回答)

学生が就職活動で企業にアピールしたい能力(複数回答)についても文系・理系別に聞いてみました。文系・理系ともに、トップは「コミュニケーション能力」(文系・理系とも53%)で、2位は「チームで働く力」(文系44%、理系48%)となっています[図表4]。1位、2位は、前年同時期に実施した「2026年新卒学生の就職活動動向調査(3月)」(以下、前回)と同じ結果となっています。「コミュニケーション能力」については、文系では以前からずっとトップでしたが、理系でトップになったのは前回が初めてです。ここでも理系の文系化傾向が垣間見えます。
文系では、3位「前に踏み出す力」(33%)、4位「目標達成指向」(27%)、5位「調整力」(27%)と続きます。「適応力」は前回3位(34%)から18ポイントも落とし、今回は11位に後退しています。逆に、今回3位の「前に踏み出す力」は前回9位(25%)から8ポイント伸ばしています。
一方の理系では、3位「論理的思考力」(36%)、4位「前に踏み出す力」(28%)、5位「リーダーシップ」(26%)と続きます。前回5位だった「基礎的な学力」(28%)は6ポイント減少して10位に下がり、今回5位の「リーダーシップ」は前回9位(22%)から4ポイントを伸ばしています。
文系と理系で違いが見られるのは今回も「専攻学問の専門知識」で、理系の18%に対して文系はその3分の1の6%にとどまります。知識やスキルに裏付けされたジョブ型就職を文系に望むのは、まだまだ先のことになりそうです。その他、「データ解析能力」や「AI活用スキル」などについても、文系は理系を下回っています。
[図表4]文理別 就職活動でアピールしたい自分の能力(複数回答)
4割以上が「学部3年生4月」以前に就活開始
2025年11月に実施した「2027年新卒学生の就職活動動向調査(11月)」で就職活動の開始時期を聞いたところ、文系・理系ともに「学部3年生5月以前」が最多となったことから、本調査ではそれ以前の選択肢をさらに拡大して再度聞いてみました。
その結果、文系・理系ともに「学部3年生4月」に就職活動を開始した学生の割合が最多で、文系で23%、理系で28%となり、理系のほうが文系よりやや高い割合となっています[図表5]。また、理系において次に多い月は「学部3年生5月」で19%となっており、“学部3年生4~5月” に就職活動を開始した理系学生が47%と半数近くにも上っています。
さらに、「学部1年生前期」~「学部2年生3月」という超早期に就職活動を開始した学生が文系で22%、理系でも13%と一定数いることが分かりました。これらの超早期組に “学部3年生4~5月” を加えて合計すると、文系は56%、理系では60%に達します。2026年卒学生を対象とした前回調査では、“学部3年生5月以前” に就職活動を開始した割合は文系45%、理系50%であったことを踏まえると、文系・理系のいずれも10ポイント以上増加しており、就職活動の早期化がさらに進行していることがうかがえます。
[図表5]文理別 就職活動を開始した時期

インターンシップ事前選考のリスクとは?
インターンシップの実施については、三菱地所株式会社が2027年卒の採用において、従来の夏・冬のインターンシップを廃止するという方針を発表しました。その背景の一つとして、インターンシップ選考の不合格者がその後の本選考への応募を避ける傾向があるため、それを解消し、より多くの多様な学生と向き合う機会を得たいとの狙いがあるとしています。
そこで、本調査において、インターンシップへの参加を希望したが参加できなかった企業の採用選考に応募したかどうかを聞いてみました。その結果、文系では「一部の企業にのみ応募した」が43%で、「すべて応募しなかった」が15%となっており、これらを合計した “応募しない企業があった” の割合は58%と6割近くに達しています[図表6]。一方の理系では、「一部の企業にのみ応募した」が58%で、「すべて応募しなかった」が13%となっており、“応募しない企業があった” は71%と7割を超えています。
この結果を見ると、三菱地所が懸念したとおり、やはりインターンシップ選考で不合格となった学生を、採用選考で取りこぼしてしまう可能性が一定数あるといえるでしょう。
[図表6]文理別 インターンシップに参加できなかった企業への本選考の応募状況

大学区分別に比較してみると、さらに興味深い傾向が見られました。「すべて応募した」の割合が最も高かったのは「その他私立大」の67%で7割近くを占め、逆に最も低い割合は「旧帝大クラス」の23%で、両者の差異は44ポイントにも上ります[図表7]。「その他私立大」に次いで高い割合なのが「中堅私立大」の43%、さらに「早慶大クラス」の41%、「上位私立大」の40%となっています。これらの大学区分の特徴としてはすべて私立大ということであり、「旧帝大クラス」以外にも「その他国公立大」24%、「上位国公立大」30%など、国公立大の学生では極めて低い割合となっています。
したがって、私立大の学生のほうが国公立大の学生よりインターンシップに参加できずとも積極的に採用選考に応募する傾向があり、逆にいえば、国公立大の学生のほうがインターンシップに参加できなかったことが採用選考の応募意欲の低下につながる傾向にあると推測されます。
[図表7]大学区分別 インターンシップに参加できなかった企業への本選考の応募状況

インターンシップに参加できなかった企業の本選考に応募しなかった理由として寄せられたフリーコメントの一部を抜粋して紹介します。「他の企業で内々定が決まった」という理由もありますが、「本選考も受からないと諦めた」「インターンシップに参加していない学生の選考が遅い」といった、インターンシップに参加できなかったことを理由とするコメントが複数見られます。
・インターン選考で落ちると、自身がその企業には合わないのではと感じたから(文系、東北大学)
・ほかの企業で早期選考に参加できたから(文系、慶應義塾大学)
・本選考もどうせ無理だと思ったから(文系、大妻女子大学)
・本選考に受かる可能性が低いと考えたから(文系、大阪大学)
・ご縁がないと感じたから(文系、早稲田大学)
・インターンで通らないなら本選考も難しいだろうと判断したから(文系、北海学園大学)
・自分の能力では合格することができないと思ったから(文系、東洋大学)
・入社したい気持ちが薄れたから(文系、専修大学)
・インターンシップに落ちた時点で、希望の業界を変えたから(文系、熊本県立大学)
・インターンシップに参加したことでその企業の志望度が上がり、そうでない企業の志望度が相対的に低下したから(理系、名古屋大学)
・インターンシップに行った企業が第一志望になったから(理系、東京農工大学)
・社員と関わる機会がないと社内の雰囲気が分からないから(理系、名古屋工業大学)
・インターンシップに参加していない学生の選考が遅いから(理系、名古屋工業大学)
・他社のインターンに参加し、早期選考の案内を受けたから(理系、東京電機大学)
・企業イメージがつかめないから(理系、大阪大学大学院)
・インターンシップにも受からないなら本選考は無理だと諦めたから(理系、中部大学)
・ほかの人に負けると思ってしまったから(理系、法政大学)
・本選考も受からないと諦めたから(理系、大阪大学)
・一般社員との交流を通じて社風を体感したかったがかなわなかったから(理系、群馬大学)
・インターンには興味があったが、働く場所として興味が持てなかったから(理系、九州工業大学)
企業としては、インターンシップの実施回数を増やしたり、1回当たりの受け入れ人数を増やしたりするほか、受け入れ人数にどうしても制約を設けざるを得ない対面型インターンシップだけでなく、オンライン型インターンシップも実施するなど、インターンシップ選考で落としてしまう学生をできるだけ減らす努力が必要でしょう。また、インターンシップ選考では落としてしまったものの、採用選考には応募してほしい多様な学生を逃してしまわぬよう、積極的なフォローアップを実施することが重要です。
次回は、今回と同じく「2027年新卒学生の就職活動動向調査(3月)」の結果の中から、内定(内々定)に関連する項目について取り上げます。
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寺澤康介 てらざわ こうすけ ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長 1986年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。2007年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。 著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。 https://www.hrpro.co.jp/ |

