2025年10月20日掲載

モデル賃金・賞与実態調査:付帯調査紹介 - 第1回 昇給における考課査定の実施状況と制度上の昇給査定幅(2017年)

 労務行政研究所が毎年実施している「モデル賃金・賞与実態調査」では、実施年によってテーマを変えて付帯調査を実施し、「特別集計」として掲載している。本連載では、2017年以降に実施した以下の特別集計について、6回にわたり紹介する。

第1回 昇給における考課査定の実施状況と制度上の昇給査定幅(2017年)

第2回 人事評価の査定頻度と処遇への反映状況(2019年)

第3回 月例賃金・賞与の支給日、算定対象期間/支給日に既に退職している者に対する賞与の支給状況(2020年)

第4回 欠勤、遅刻・中抜け・早退控除の実態(2021年)

第5回 夏季賞与の制度上の査定幅(2022年)

第6回 初任給引き上げに伴う在籍者賃金の調整(大学卒・総合職の場合)(2023年)

※特別集計については、労務行政から毎年発行している『モデル賃金・年収と昇給・賞与』(こちら)で掲載しています

※第1回(2017年調査)の調査要領は、こちらをご覧ください

1.昇給における考課査定の実施状況

考課査定の実施状況[図表1]

管理職で87%、一般従業員で92%が「考課査定基準に基づいて実施する」

 ルールに基づき毎年実施する「定期昇給制度」がある企業に対し、昇給において考課査定を行っているかどうかを尋ねた。なお、「定期昇給制度」というと、年齢や勤続年数などに伴って毎年自動的に発生する “自動昇給” だけを指す企業もあるが、本調査ではこのような自動昇給だけでなく、能力や業績など査定に基づく “査定昇給” まで含めて “定期昇給” と捉えているので留意いただきたい(ただし、職位や職能資格など格付けの上昇に伴う “昇進・昇格昇給” は除いている)。
 調査結果を見ると[図表1]、「考課査定基準に基づいて実施する」企業が、管理職で86.7%、一般従業員で92.2%とほとんどを占めた。「まったく実施しない(昇給に考課は反映しない)」は、管理職で9.2%、一般従業員で4.6%となっている。「まったく実施しない」企業では、“考課査定は定期昇給では行わず、昇進・昇格の判定時に行う” “昇給では査定は行わず、賞与において査定を反映させる” などとするケースが見られた。いずれにしても、定期昇給制度を有する企業では、考課査定は一般的に実施されているといえる。
 なお、集計社数が一般従業員の218社に対して管理職195社と管理職のほうで23社少ないのは、「管理職については回答しない」とする企業のほか、既に一定の賃金水準に達した管理職については「定期的な昇給を廃止して、基本給を “等級別定額(シングルレート)” とし、成果・貢献度に応じて賞与や業績給のアップ・ダウンで報いる」、あるいは「管理職には年俸制を適用する」等の企業が見られたためである。

[図表1]昇給における考課査定の実施状況

図表1

2.制度上の昇給査定幅

留意事項

査定幅の状況[図表2]

昇給額全体で見た場合、「最高と最低の幅が同一」が担当者クラスでは44%、課長クラスでは33%を占める

 標準者の評価(100)に対して、最高幅と最低幅のどちらが大きいかを、各社の回答を基に分類した。
 査定分のみで見た場合、「最高と最低の幅が同一」が、担当者クラス(入社5年目程度。以下同じ)では46.7%、課長クラスでは35.9%で最も多い。これは、制度上、良い査定に対するプラス分も、悪い査定に対するマイナス分も、等しくするという考え方である。担当者クラス、課長クラスとも、次に「最低の幅が大きい」がそれぞれ28.3%、33.3%で多くなっている。
 昇給額全体で見ても、担当者クラスでは査定分のみで見た場合と同様「最高と最低の幅が同一」が44.4%で最も多い。一方、課長クラスでは「最低の幅が大きい」が34.0%で最も多いが、「最高と最低の幅が同一」と「最高の幅が大きい」もともに33.0%となっており、三者が拮抗(きっこう)している。

[図表2]昇給における査定幅の状況

図表2

査定幅の平均値[図表3]

昇給額全体で見た場合、担当者クラスで最高158~最低42、課長クラスでは同様に214~△19。課長クラスのほうが査定幅は広い

査定分のみで見た幅
 実際の査定幅の平均値を査定分のみで見ると、担当者クラスでは171.0~31.1、課長クラスでは215.0~20.0となった。
 しかし、査定分のみで見ると、昇給全体に占める “査定分の割合” によって、昇給全体への影響度が異なり、正しい比較ができないケースも考えられる(例えば、前掲「留意事項」における[例②]のように査定分のみで見たときに査定幅が150~50あっても、年齢昇給が1000円あれば、昇給額全体で見た査定幅は142~58となり、査定幅は縮小する)。
 そこで本調査では、昇給額全体で見た査定幅についても尋ねている。

[図表3]昇給における査定幅の平均値

図表3

昇給額全体で見た幅
 平均値を昇給額全体で見ると、担当者クラスでは157.5~41.9で標準(100)を中心としておおむね±58程度である。同様に、課長クラスでは213.6~△19.3で+114~-119程度であった。最低の△19.3とは、標準昇給額の19.3%分 “減額” になる、ということである(例えば標準評価の昇給額を1万円とすると、最高2万1360円~最低△1930円となる)。
 この結果は、2009年に行った前回調査(担当者クラス166.0~33.8、課長クラス208.6~△8.5)と比較しても大きな差はない。
 昇給査定幅は、考課査定で判定した “働きぶり” の差を反映し、それにマッチしていることが求められる。担当者<課長と査定幅が拡大していることは、権限の拡大とも整合しているといえる。
 また、産業別に見ると、担当者クラスでは製造業より非製造業のほうで査定幅が大きい一方、課長クラスでは産業別に大きな差は見られなかった。
 規模別に見ると、担当者クラスでは1000人以上の査定幅が最も大きく121.3ポイント、課長クラスでは300~999人の査定幅が最も大きく284.5ポイントとなった。産業別に見ても規模別に見ても、担当者クラスより課長のほうが査定幅が大きくなっている。
 なお、前記「査定分のみで見た幅」と「昇給額全体で見た幅」では集計(回答)企業が異なるため単純には比較できないが、担当者クラスと比較して課長クラスのほうが、「査定分のみ」と「昇給額全体」との差は縮まっていることが分かる。これは、担当者クラスでは査定に基づく昇給のほか、年齢や勤続年数などに伴って毎年自動的に発生する自動昇給を有する企業があるが、課長クラスになるとそのような自動昇給がある企業は大きく減少するためである。

査定幅の分布状況[図表4~5]

分布はバラつきが大きく、各社各様である

 査定幅の分布を、「昇給額全体」について見ていこう。

担当者クラス
 [図表4]で最高幅の分布を見ると、「111~120」が18.0%、「131~140」が13.5%などとなっており、101~150の間で6割以上を占める。「191~200」が9.8%、200を超えるところも11.3%あり、分布はバラついている。
 一方、最低幅は「0~9」が17.3%と最も多く、以下「80~89」が15.8%、「60~69」と「50~59」が各12.0%と続く。マイナス(=減額)とする企業は、全体の7.5%となっている。
 最高・最低をクロスさせてみると、最も多いのは「最高111~120・最低80~89」で12.0%、以下「同101~110・同90~99」8.3%、「同131~140・同60~69」「同141~150・同50~59」各6.8%と続く。分布には、かなりのバラつきが見られる。
 昇給における査定幅はただ「メリハリをつければよい」というものではなく、「考課査定に基づく “働きぶり” の差を反映し、それにマッチしていること」が求められる。したがって、各社における “働きぶり” の差になじむ昇給査定幅を設定した結果、このようなバラつきが生じたものと考えられる。

課長クラス
 最高幅の分布は、「111~120」が最も多く17.0%、以下「141~150」が13.2%、「191~200」が11.3%と続く。200を超えるところは25.5%と約4社に1社に上る。
 一方、最低幅は「0~9」が17.0%、「80~89」が12.3%で多いものの、「△100~△51」が11.3%となっており、マイナスとする企業が21.7%と2割を超える。
 最高・最低のいずれを見ても、担当者クラスよりも査定幅は大きいほうにシフトしているといえよう。
 最高と最低のクロスでは、「最高111~120・最低80~89」と「同141~150・同50~59」が各8.5%で最多だが、こちらも分布にはバラつきがあり、各社各様である。

[図表4]昇給における査定幅の最高・最低の分布状況(昇給額全体で見た幅)

図表4

[図表5]昇給における査定幅(最高額)の分布状況(標準100に対する最高幅について)

図表5

査定幅の広がりごとの分布状況[図表6]

担当者クラスでは「±60%以内」に57%が、課長クラスでは「±80%以内」に約半数が分布

 査定幅の広がりごとの分布状況を見たところ、担当者クラスでは、査定幅が「±40%以内」に40.6%と4割が分布し、「±60%以内」で過半数(57.4%)に達する。
 課長クラスでは、「±40%以内」は30.2%、「±60%以内」は41.5%、「±80%以内」でも50.9%と、担当者クラスに比べ査定幅が大きいほうにシフトしていることが分かる。
 査定幅の分布は担当者クラスより課長クラスのほうが広がっていることが、ここからも明らかである。

[図表6]査定幅の広がりごとの分布状況(昇給額全体で見た幅)

図表6

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