定年延長とともに再雇用制度を見直し、高年齢者の活躍を実現する3社
1. 定年延長の現状
[1]背景と導入状況
高年齢者雇用安定法では、65歳までの雇用確保義務として、事業主が定年を定める場合は定年年齢を60歳以上とし、定年を65歳未満に定めている場合には、以下いずれかの措置(雇用確保措置)を講じることとしてきた。
①定年制の廃止
②65歳までの定年の引き上げ
③希望者全員の65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
2013年4月に施行された改正法では、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢以上の者について、継続雇用制度の対象者を労使協定で限定できる仕組みを原則廃止し、2025年3月31日までを経過措置期間とした。その後、2021年4月に施行された改正法により、上記の65歳までの雇用確保(義務)に加えて、70歳までの就業機会確保も努力義務として定められた。
上記経過措置期間が終了した後、2025年4月にはすべての企業で、上記①~③の雇用確保措置への対応が必須となる。
一方で、65歳までの高年齢者雇用確保措置の進展等を受けて、2025年4月から新たに60歳となる労働者への高年齢雇用継続給付の最大給付率が引き下げられることとなった(15%→10%)。
こうした法制面での動きを見据えて、近年では定年年齢の引き上げを検討する企業が多く見られている。人手不足が深刻化する中で、自社の状況をよく理解している経験豊かな人材にモチベーション高く働いてもらうために、60歳を境にして大きく役割等の変更が行われて処遇も低下する再雇用よりも、正社員のまま65歳まで活躍してもらうことを重視したものと思われる。
一方で、定年延長を行うためには、若年層との処遇バランスや総人件費管理、高年齢者本人のキャリア形成等の観点から、制度設計面で多くの課題が考えられる。さらに、高年齢者の雇用には健康面や本人のモチベーション等、注意すべき点が多い。
当研究所の「高年齢者の処遇に関するアンケート」(本誌第4073号-24. 3. 8)によると、調査時点(2023年12月)で「65歳」定年の企業は全体で11.2%と1割程度であるが、1000人以上の規模の企業では19.5%と2割ほど見られた[図表1]。また、2020年以降における定年の見直し状況については、1000人以上では「定年を引き上げた」が12.5%、「検討中」も半数(50.0%)を占めていた[図表2]。企業規模が大きくなるほど、65歳までの定年延長の導入や検討を進めている様子が見受けられる。