2023年08月11日発行 労政時報本誌  4061号 014頁

特集1

人的資本の可視化・情報開示への対応

近年、「人的資本」への関心の高まりとともに、人的資本の可視化・開示に向けて独自の取り組みを進める企業が増えている。現状では人的資本、多様性に関する開示項目として女性活躍推進法等に基づき「女性管理職比率」「男性の育児休業取得率」「男女間賃金格差」の公表が義務づけられている一方、これら以外の項目の選定や開示方法は、企業の判断に委ねられている。人的資本経営が注目を集める中で、自社の戦略に沿った開示項目の設定や開示方法は企業価値の向上のカギとなる。
本特集では、人的資本可視化・情報開示の取り組みを進める先進企業2社の事例を紹介する。また、後段では、人的資本可視化のうち、特に、法令等で義務化されていない「任意開示」領域での情報開示推進についてのポイントを、株式会社日本総合研究所の國澤勇人氏、髙橋千亜希氏、石山大志氏に解説いただいた。

■丸井グループ

 人的資本経営の取り組みは、グループを横断したものであり、2005年に青井 浩氏が社長に就任した際にスタートした「企業文化の変革」を源流とする。
 企業文化の変革では、経営環境や顧客の変化を捉えたイノベーションを創出できる企業となるため、社員自身の多様性を培い、自律性を養うことを狙いとして八つの施策を推進してきた。この10年以上にわたる取り組みの成果を説明する意図で、2022年度決算発表資料において人的資本の情報を開示した。
 2023年3月期の有価証券報告書では、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の項において「人的資本経営の取り組み」を説明し、企業文化変革の取り組みと人的資本に関する項目を提示。中でも、①自ら手を挙げ参画する社員数(率)、②グループ間職種変更異動者数(率)、③女性イキイキ指数は同社の特徴的な独自の指標である。いずれも有価証券報告書における開示を検討する以前から計測を行っていたもので、ESGデータブックで公表していた。さらに「人的資本投資」を再定義した上で、人的資本投資に対するリターン(効果)を計測している。

■リクルート

 2021年4月の経営統合を機に、好奇心を起点に人々が集まり、協働・協創が生まれる“公園”のような場を目指し、「CO-EN」というコンセプトを掲げる。「CO-EN」の実現に向け、会社が提供する「3つのPROMISE」(①能力開発・チャレンジできる機会拡充、②安心安全を前提により柔軟に、よりクリエイティビティ高く個々人の働き方を選択しやすい環境へ、③Pay for Performance)を定め、人的資本を最大化させるための施策を展開している。
 人的資本開示の検討は、2021年4月より開始。人事起点でプロジェクトを立ち上げ、1年間かけて準備し、2022年4月に人事施策の全体像や可能な限りの数値情報を開示した。加えて、同年6月、人的資本にまつわるデータをまとめた「数字で見るリクルート DATA BOOK 2022」を公開。2023年6月末にサイトリニューアルを実施し、「DATA BOOK 2023」を公開している。
 開示に向けた準備は、①要件定義、②可視化、③開示内容の検討の3ステップで実施。「自社の人的資本経営を象徴する情報」を精査し、ストーリー性を持たせた開示を心掛けた。また、開示後の社内外からのフィードバックを取り組みのアップデートを進める重要な機会と捉えており、求職者向けアンケートや他社人事とのコミュニケーションにも注力している。

[図表]指針で示された可視化に向けた準備の例[図表]指針で示された可視化に向けた準備の例

資料出所: 内閣官房 非財務情報可視化研究会「人的資本可視化指針」



『労政時報』第4061号(23. 8.11/ 8.25)の特集記事

1.人的資本の可視化・情報開示への対応

2.竹中工務店の人事制度改定事例

3.人材戦略を加速するファストトラックの導入と運用のポイント

4.2023年度決定初任給の最終結果

5.2023年度 新入社員の意識と行動

※表紙画像をクリックすると目次PDFをご覧いただけます


◎「WEB労政時報 有料版」では、2001年以降の『労政時報』記事をすべてご覧いただけます

◎ 期間限定で「WEB労政時報 有料版」の機能をお試しいただける《体験版》をぜひご利用ください

―「労政時報」最新号の全文や、記事の一部、検索機能、掲載コンテンツのインデックスページをご覧いただけます。《体験版》のご利用お申し込みはこちらをご覧ください。

この記事は有料会員限定です。