2023年06月07日掲載

採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント - 2023年6月

ProFuture株式会社/HR総研
代表 寺澤康介

(調査・編集:主席研究員 松岡 仁)

 ProFuture代表の寺澤です。
 最近、各所で賛否両論を巻き起こしている対話型AI「ChatGPT」ですが、皆さんはお試しになりましたか? 就活分野においても「ChatGPT」を利用したサービスがすぐに出てくるであろうことは予想していましたが、案の定、就活学生向けにエントリーシート作成サービスなるものを提供し始めた就活関連サイトが現れました。「アルバイト」や「留学」などのトピックと、そこで成し遂げた内容、自分の強み、提出する業界、文字数を選択するだけで、自己PRが自動生成されるというものです。私自身も試してみましたが、以下のような回答が返ってきました。
 「私が学生時代に力を入れたことはアルバイトです。その中でも、特に接客の質と効率を向上させることに注力しました。顧客とのコミュニケーション能力や情報デザインのスキルを生かし、顧客のニーズに応じた対応を心がけました。その結果、顧客との距離が縮まり、より信頼関係を築くことができました。また、私が改良した案内地図や施設案内により、顧客からも高い評価を受け、社員からも信頼を得て、より責任ある職務を任される機会を得ることができました。私はコミュニケーション能力を重視し、顧客と現場のニーズに応える意識を持ってアルバイトに取り組んだ結果、顧客満足度の向上に貢献できたと考えています」
 いかがでしょうか。私は五つの設問について、提示された選択肢の中から一つずつ選んだだけで、自分で一切の文字入力をしていません。後は、この内容をベースに自分に合った表現にカスタマイズするだけで、十分それらしい文章になります。恐ろしい時代が来たものですね。エントリーシートでの書類選考がこれまでよりも困難になり、「面接」がより重要な選考プロセスになることは間違いありません。

「リクナビ」に並んだ「ONE CAREER」

 さて、今回も、前回から引き続き、HR総研が「楽天みん就」と共同で実施した「2024年卒学生の就職活動動向調査」(2023年3月7~22日)の結果を紹介します。
 まずは、就活生が「活用している就職サイト」について、前年同時期調査と比較しながら確認していきます。上位四つのサイトは、文系・理系ともに同じ順位で、「マイナビ」が1位、「楽天みん就」が2位、「リクナビ」が3位、「ONE CAREER」が4位(理系は同率3位)となっており、これは前回の2023年卒と変わりありません[図表1]。ただ、気になるのは2023年卒よりもポイントを減らしているサイトが多いことです。特に「マイナビ」と「リクナビ」は、2010年代の半ばまでは活用率が90%を超えていたものです。しかし、トップの「マイナビ」ですら、文系では2023年卒より6ポイント減少し71%、理系では14ポイント減少して63%と、6割台にまで低下しています。「リクナビ」に至っては、文系が55%、理系も54%で何とか過半数を維持している状態です。これらのサイトは、2010年代の半ばまでの就活生にとって、就活全体の流れを学び、業界の基礎知識を吸収する場であるとともに、合同企業説明会への参加申し込みを始め、企業へのプレエントリーや説明会の参加申し込み、さらにはエントリー企業からの連絡を管理する役割までも果たし、“就活プラットフォーム”とまで呼ばれていました。これら総合型就職ナビを活用しなければ就職活動ができないとまでいわれていた時代を懐かしく感じます。

[図表1]活用している就職サイトTOP10(複数回答)

[図表1]活用している就職サイトTOP10(複数回答)

 2023年卒で注目された「ONE CAREER」と「リクナビ」との差について見てみると、文系ではポイントを下げたものの、「リクナビ」との差は2023年卒の12ポイントから8ポイントに縮まりました。理系では「ONE CAREER」がポイントをさらに伸ばし、「リクナビ」と同率の評価を得ています。2位の「楽天みん就」は、今回の調査がその会員学生を対象とした調査であるため、他のサイトとフラットに比較するのは難しいこともあり、就活生から口コミサイトとして最も支持されているのは「ONE CAREER」だと推測されます。

理系の活用サイトは分散化傾向

 前項では、活用している複数の就職サイトを選択してもらいましたが、「最も活用している就職サイト」を一つだけ選択してもらったら、どうなるでしょうか。
 1位は「マイナビ」、2位は「ONE CAREER」、3位は「リクナビ」と、上位三つのサイトは文系と理系で同じ結果になりました[図表2]。トップの「マイナビ」は、文系では2023年卒と同じ48%の支持を得ましたが、理系では2023年卒の39%から11ポイントも減少し、28%となりました。一方、ポイントを伸ばした2位の「ONE CAREER」(22%)とは6ポイントの差にまで縮まっています。この勢いが続けば、次回2025年卒の調査ではトップが逆転する可能性すら出てきました。3位の「リクナび」は文系・理系ともにポイントは減少しましたが、わずか1~2ポイントの減少で踏みとどまっています。

[図表2]最も活用している就職サイトTOP10(単一回答)

[図表2]最も活用している就職サイトTOP10(単一回答)

 文系では、順位は多少変動するものの、TOP10サイトのポイントはあまり変動しませんでした。一方、理系では、「マイナビ」以外にもポイントが変動したサイトがあります。同率4位の「就活会議」と「OpenWork」は、いずれも2023年卒の2%から5ポイント増の7%となり、2023年卒で4位であった「楽天みん就」や同5位の「OfferBox」ほかを逆転して大躍進しています。理系では、文系以上に総合型就職ナビの地位が後退する一方、口コミサイトや逆求人型就職サイトの台頭が激しくなり、就職サイトの利用がより分散化しているようです。
 また、「dodaキャンパス」が文系・理系ともにポイントを増やしており、逆求人型就職サイトでずっと活用率トップを堅持してきた「OfferBox」の位置を脅かす存在になるかもしれません。

 上位の就職サイトについて、学生の選択理由コメントを抜粋して紹介します。

【マイナビ】

  • サイトの使い勝手がいいため。企業検索の絞り込みもしやすいし、マイページの操作も分かりやすい。また、自己分析や面接対策のためのコンテンツが充実しているもの魅力(文系、上位私立大)
  • 地方の企業も多数掲載されているから。合同説明会を多数開催しており、信頼できるから(文系、その他国公立大)
  • 包括的な情報を得られる(理系、旧帝大クラス)
  • 掲載数が多く、見やすいため(理系、上位私立大)

【ONE CAREER】

  • エントリーシートや面接対策の参考になるから(文系、上位私立大)
  • 選考フローについて詳しく記載があるため(文系、早慶大クラス)
  • 過去のESや試験問題の形式などを一括で確認することができるため(理系、旧帝大クラス)
  • 選考対策の情報が詳しく、選考中に最も活用したサイトだったから。特に面接で聞かれたことに関しての情報は重宝した(理系、旧帝大クラス)

【リクナビ】

  • 企業数が多い(文系、上位国公立大)
  • 画面が見やすいため(文系、その他私立大)
  • エントリーや説明会の予約をしているから(理系、中堅私立大)
  • 情報掲載量が多く、OpenESなどが使いやすいと感じるため(理系、その他国公立大)

危機感の少ない理系学生

 コロナ禍からの業績回復により、企業の採用意欲が高まっており、「売り手市場感」が一層強まっています。また、早期インターンシップへの参加が早期選考や早期内定につながるなど、学生の就職に向けた危機感や不安感が低下し、プレエントリー社数や説明会参加社数、面接社数などの就職活動の活動量が前年より減少している可能性があります。以下は、過去と比較しながら就活生の活動量を分析します。
 まずは「プレエントリー社数」です。文系学生の3月上旬時点でのプレエントリー社数を、過去3年間(2022~2024年卒)で比較した結果が[図表3]です。2024年卒で最も多いのは、「1~20社」で、次いで「21~40社」となっています。全体的な傾向に大きな変化は見られません。参考までに、「0社」と「1~20社」を合わせた「20社以下」(以下同じ)の活動量の少ないグループは、2022年卒から順に58%、57%、56%とほぼ変化はなく、かえって微減しているくらいです。「20社以上」の内訳を見ても大きな変化は見られず、活動量は2023年卒と変わっていないといえます。

[図表3]プレエントリー社数の比較(文系、単一回答)

[図表3]プレエントリー社数の比較(文系、単一回答)

 一方、理系の場合、過去3年間の「20社以下」の推移を比較すると、2022年卒から順に72%、69%、77%と大きく変動しています[図表4]。ただし、「0社」は2023年卒よりも減少しており、「1~20社」は11ポイントも増加しています。「21社以上」の内訳を見ても、ほぼすべての区分で2023年卒から減少しており、2024年卒の活動量は確実に減少していると考えられます。企業の採用意欲は文系よりも理系学生のほうが高く、学生にもその意欲が伝わっているようです。このことは、理系学生のほうが就職活動への危機感が少ないことを示しています。

[図表4]プレエントリー社数の比較(理系、単一回答)

[図表4]プレエントリー社数の比較(理系、単一回答)

セミナー・会社説明会への参加社数は微減

 次に、企業ごとに開催される「セミナー・会社説明会への参加社数」を確認しましょう。2022年卒からの3年間を比較した結果は、文系学生が[図表5]、理系学生が[図表6]です。まず、文系の場合、最も多かったのは「6~10社」(22%)で、次いで「4~5社」(18%)、「11~15社」「21社以上」(いずれも9%)と続きます。全体的な傾向は過去2年と同様です。ただし、活動量の多い「6社以上」(「6~10社」~「21社以上」の合計、以下同じ)を比較すると、2024年卒では47%と初めて半数を下回り、2022年卒と2023年卒では9%だった「0社」が2024年卒では13%へと増加しています。これにより、活動量が減少している傾向が見られます。
 理系の場合は、「6社以上」のへの参加割合は過去2年とほぼ同じですが、「6~10社」が増えた一方、「11~15社」が減少し、「0社」が増えた一方、「4~5社」が減少するなど、こちらも活動量が減少していることが分かります。

[図表5]個別企業セミナー・説明会参加社数の比較(文系、単一回答)

[図表5]個別企業セミナー・説明会参加社数の比較(文系、単一回答)

[図表6]個別企業セミナー・説明会参加社数の比較(理系、単一回答)

[図表6]個別企業セミナー・説明会参加社数の比較(理系、単一回答)

 次に、「セミナー・会社説明会へ初めて参加した時期」については、文系学生と理系学生を合わせた過去3年間の比較を行います。最も多かったのは「前年6月以前」で、2024年卒は2023年卒よりわずかに減少しましたが、依然として16%で最も多い時期となりました[図表7]。次いで、「前年7月」と「前年8月」が引き続き増加し、これらを合わせた「前年8月以前」(以下同じ)に初めて参加した学生の割合は39%で、ほぼ4割に達しています。一方、「本年2月」と「本年3月」はそれぞれ参加率が減少し、2022年卒と比較すると半分程度となっています。「前年8月以前」といった早い時期に初めて参加する割合が高い一方、「まだ参加していない」学生の割合も増加しており、二極化の傾向が見られます。ただし、「まだ参加していない」学生の中には、インターンシップから直接選考プロセスに進んだ学生も含まれる可能性がありますので、必ずしも活動が遅れているとは断言できません。

[図表7]個別企業セミナー・説明会に初めて参加した時期の比較(単一回答)

[図表7]個別企業セミナー・説明会に初めて参加した時期の比較(単一回答)

初めての面接、ピークは2月から1月へ前倒し

 セミナー・会社説明会への参加社数では、活動量はわずかに減少していましたが、次のステップである「面接」はどうでしょうか。2022年卒からの3年間を比較した結果を見てみましょう。文系学生の場合が[図表8]、理系学生の場合が[図表9]です。まず、文系の場合、最も多かったのは「0社」であり、その割合は32%と3割を超えますが、2023年卒からは2ポイントの増加にとどまります。全体的に2023年卒との差異は少なく、唯一「4~5社」の割合が14%から9%へと5ポイント減少したところが目立つ程度です。残りは「0社」と同様、1~2ポイントの差の範囲にとどまっていますので、活動量としてはほぼ変わらないと推測されます。
 一方、理系の場合は、「0社」の割合が7ポイントも増加したものの、「1社」と「2社」はそれぞれ5~6ポイント減少し、これらを合計した「2社以下」の割合を比較すると、2022年卒から順に58%、55%、51%と年々減少していることが分かります。中程度の社数は増加していますが、4ポイントも増加したのは「3社」だけで、「4~5社」や「6~10社」はほぼ変わりません。「11~15社」から「21社以上」の社数の多いグループもほぼ変化がありませんので、こちらも活動量としてはほぼ変わらないと推測されます。

[図表8]面接社数(文系、単一回答)

[図表8]面接社数(文系、単一回答)

[図表9]面接社数(理系、単一回答)

[図表9]面接社数(理系、単一回答)

 次に、「面接を初めて受けた時期」について、文系学生と理系学生を合わせた過去3年間の比較を行います。2023年卒では、「前年7月」から「本年1月」までの割合が増加し、「本年2月」と「本年3月」は大きく減少しましたが、この傾向は2024年卒でも続いています[図表10]。「本年2月」と「本年3月」の合計は、2022年卒から順に50%、33%、29%と大きく減少しており、2024年卒では3割以下になっています。2022年卒と比較して、「前年6月以前」から「本年1月」まではすべての時期で増加傾向にありますが、特に「(前年)12月」と「本年1月」はそれぞれ4~5ポイント増加しています。その結果、面接を初めて受けた割合が最も高い月は、2023年卒までの「(本年)2月」から「本年1月」へと前倒しが進んでいます。

[図表10]面接を初めて受けた時期の比較(単一回答)

[図表10]面接を初めて受けた時期の比較(単一回答)

コロナ禍に負けず、「ガクチカ」に取り組む学生たち

 2024年卒の学部生の場合、大学入学時点(2020年4月)ですでにコロナ禍が始まっており、対面での入学式もなく、同期入学の学生たちと直接会うこともできないまま、ずっとオンライン授業のみでの大学生活がスタートしました。実際にキャンパスに足を踏み入れたのは、昨年、つまり大学3年生になってようやくという学生も多かったようです。このように対面での活動を制限された世代に対して、「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」のアピールは難しいだろうとの声をよく聞きます。以前、本欄でも従来とは違う視点で評価する必要があるのではないかとも書きましたし、3月には日立製作所が面接選考時に「ガクチカ」の質問はしない方針であることを発表しました。では、当事者である学生たちはどう感じているのでしょうか。
 コロナ禍での大学生活を送る中で、「ガクチカ」に取り組むことができたかを尋ねたところ、文系学生の44%、理系学生の57%が「コロナ禍に関係なく取り組めた」と答えています[図表11]。「コロナ禍で新たに見つけ、取り組めた」と答えた学生を含めると、文系では76%、理系でも79%となり、8割近い学生が「取り組めた」と回答していることになります。「コロナ禍で取り組めなくなった」と弱音を吐いた学生は文系で20%、理系ではさらに少ない11%だけでした。大人たちが心配する以上に、学生たちはそれぞれ工夫して頑張っていたようです。

[図表11]「ガクチカ」への取り組み状況(単一回答)

[図表11]「ガクチカ」への取り組み状況(単一回答)

 「取り組めた内容」、あるいは「取り組めなかった内容」として学生が記入したフリーコメントを紹介します。

【コロナ禍に関係なく取り組めた内容】

  • 学習塾のアルバイトでのイベント企画(文系、上位私立大)
  • 人材業での就活エージェントとしての活動(文系、上位私立大)
  • インターン、サークル。コロナだからといって、何ができなかったかということは分からない(文系、早慶大クラス)
  • よさこいサークルに所属して、毎日家にいることがないくらい充実した活動ができた(文系、その他私立大)
  • 自転車で日本全国を踏破すること(理系、上位国公立大)
  • フライングディスク部で、創部以来、初の全国大会出場(理系、旧帝大クラス)
  • 野球応援、シミュレーションによる戦術分析(理系、上位私立大)
  • 積極性を身につけるため、交流の場を広げること(理系、その他私立大)
  • 産学連携プロジェクトにおいて、1カ月かけてチームでサービスをデザインした(文系、その他私立大)
  • 長期インターンシップとオンライン留学(文系、中堅私立大)
  • 論文大会(文系、早慶大クラス)

【コロナ禍で新たに見つけ、取り組めた内容】

  • コロナ禍において、マスクやパーティションがあってもより分かりやすい接客に取り組んだ(理系、上位国公立大)
  • アプリケーションの作成(理系、その他私立大)
  • 新型コロナ関連のボランティア経験(理系、早慶大クラス)
  • ネットショップを立ち上げ、実際に作品を販売した(文系、その他私立大)
  • 離島生活(理系、上位国公立大)
  • 研究室に行けないため、対面での実験ができなくなった代わりに、PCで新しい解析方法を自分で編み出して、別の観点から研究に対するアプローチができた(理系、上位国公立大)
  • コロナ禍での学びの不足がきっかけとなり、編入したこと(文系、その他私立大)
  • 資格取得に取り組んだ(文系、中堅私立大)
  • コロナ禍で巣ごもりしている間に筋トレを行った(文系、旧帝大クラス)

【コロナ禍で取り組めなくなった内容】

  • 学校のスポーツセンターに通って水泳や筋トレをしようと思っていたが、コロナ禍でスポーツセンター自体が開いておらず、そのまま時間がたち、実習やアルバイトなどで忙しくなってしまい、やる機会がなくなってしまった(理系、その他私立大)
  • 競技かるた。練習はできても、昇級
  • 昇段のための大会は至近距離で、対面で行う競技のため中止となった(文系、その他私立大)
  • サークル活動。オリンピックボランティア(文系、中堅私立大)
  • 海外留学(文系、早慶大クラス)
  • サークルに入るタイミングがなかった(理系、その他私立大)
  • 音楽活動(文系、その他私立大)

【コロナ禍に関係なく取り組めなかった内容】

  • ボランティア(理系、上位国公立大)
  • サークル活動や課外活動(理系、その他国公立大)
  • チームでの開発経験を積みたかった(理系、中堅私立大)
  • もともと取り組もうとしていたことがなかった(理系、その他国公立大)
  • 海外留学(理系、その他国公立大)

文系の早期内定、3月で内定承諾決断は3割

 最後に、3月時点での「内定」関連の結果を確認しましょう。まず、「内定を取得した社数」を文系と理系で比較したところ、文系では「0社(未内定)」が67%、理系では53%でした。つまり、内定率は文系が33%、理系が47%となりました[図表12]。理系のほうが文系よりもかなり早く選考が進行していることが分かります。これは、それだけ理系人材の争奪戦が激しいことを示しています。最も多い内定社数は「1社」で、文系が19%、理系が24%であり、次に多いのは「2社」で、文系は8%に対して理系は18%と、理系のほうが多くなっています。ただし、「3社」以上の内定社数においては、文系と理系の間にほとんど差が見られません。

[図表12]内定社数(単一回答)

[図表12]内定社数(単一回答)

 次に、1社以上から内定を取得した学生のみを対象に、「内定承諾の状況」を尋ねたところ、文系と理系では大きく異なる結果が得られました[図表13]。文系では「まだ決めかねており、就職活動を続ける」が63%と6割を超え、内定先への承諾をせずに、より志望度の高い企業の選考に向けた就職活動を継続している学生が多くなっています。一方、理系では、「内定承諾した、もしくは、内定承諾する企業を決めた」が57%と6割近くに上り、さらに「まだ決めかねているが、就職活動は終了した」と合わせると、64%が就職活動を終了していることが分かります。理系の場合、年々利用者は減少傾向にあるとはいえ、原則的に内定が出れば承諾する必要がある「推薦応募」を利用している学生が1~2割程度存在し、これが文系との意識の差に影響を与えていると考えられます。ただし、文系と理系の間には、この要因だけでは説明できない差が存在し、3月時点という早期内定者においては、理系学生のほうが内定先への志望度が高く、迷いなく入社を決断できていることが推測されます。近年では、最初に内定をもらった企業(=自分を最初に評価してくれた企業)を就職先として早々に決める学生が増えているといわれています。これにより、就職活動に対して淡泊というべきなのか、純粋というべきなのか分かりませんが、このタイプの学生が理系に多い可能性もあります。また、早々に就職活動を終了して、一刻も早く大学の研究課題に取り組みたいという動機の学生も存在しそうです。

[図表13]内定承諾の状況(単一回答)

[図表13]内定承諾の状況(単一回答)

 ところで、まだ内定承諾を決断できない理由は何なのでしょうか。内定承諾を決めかねている理由について、主な意見をフリーコメントで以下に紹介します。

【内定承諾を決めかねている理由】

  • 自身の将来像、かなうべき未来を実現できるのかが疑問だから。実現可能性が低いと感じているから(文系、上位私立大)
  • 第一志望から内々定をもらったものの、いわゆるオワハラに当たることをされたから(文系、その他私立大)
  • まだ就職活動を続け、自分に合う企業を最後まで探したいため(文系、早慶大クラス)
  • 自分の力がどこまで通じるのか試したいから。また、自分の目指しているところが合っているのか、まだ分からないから(文系、上位私立大)
  • 勤務地について地元で働くか、地元を出るか迷っているため、幅広く企業を見る必要があるから(文系、旧帝大クラス)
  • 公務員試験を受験するため(文系、旧帝大クラス)
  • 就活を通した自己成長を目指し、大手も受けてみたいと考えているため(文系、中堅私立大)
  • 面接練習用企業のため(文系、上位私立大)
  • ほかにも志望度の高い企業の選考があるから(理系、旧帝大クラス)
  • 現在、研究活動に忙しく、ゆっくり考える時間が欲しいため(理系、上位私立大)
  • 業界も職種も異なる他社と迷っており、その選考はまだ始まったばかりだから(理系、早慶大クラス)
  • 就活の軸が変わったため(理系、中堅私立大)
  • 進学と迷う(理系、中堅私立大)
寺澤 康介 てらざわ こうすけ
ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長
86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。
https://www.hrpro.co.jp/