2023年05月09日掲載

採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント - 2023年5月

ProFuture株式会社/HR総研
代表 寺澤康介

(調査・編集:主席研究員 松岡 仁)

 ProFuture代表の寺澤です。
 4月26日にリクルートワークス研究所の「大卒求人倍率調査(2024年卒)」の発表がありました。2024年卒の求人倍率は、全体では2023年卒の1.58倍より0.13ポイント上昇の1.71倍となり、コロナで採用を中止あるいは抑制していた業界も採用を復活させるなど、より企業の採用意欲の高まりが反映されています。ただ、コロナ禍直前の2020年卒の1.83倍までには届きませんでした。
 従業員規模別に見ると、前年と比較してすべての規模で上昇が見られたものの、300人以上の企業の区分では0.02~0.04ポイントの上昇にとどまり、300人未満の企業では0.88ポイントも上昇し、2023年卒の5.31倍から6.19倍へと大きく跳ね上がっています。中小企業の求人総数が前年比で11.6%と大きく増加したのに対し、対する学生側の就職希望者が4.3%の減少となったことによるものです。
 前年までの採用意欲の高まりはどちらかというと大企業中心で、ようやく中小企業においても採用増の機運が高まってきたというのに、中小企業にとっては、全体の求人倍率の上昇幅とは比較にならない厳しい環境となっているようです。

7年間でここまで早期化した採用戦線

 さて今回は、前回から引き続き、HR総研が人事採用担当者を対象に2023年3月に実施した「2024年新卒採用動向調査」に加え、HR総研が「楽天みん就」と共同で2023年3月7~22日に実施した「2024年卒学生の就職活動動向調査」の結果を紹介します。
 まずは、「2024年新卒採用動向調査」の結果からです。HR総研では、現在の就活ルール(3月1日:採用広報解禁、6月1日:採用選考解禁)になった2017年卒採用(当時は経団連「採用選考に関する指針」)以降、毎年解禁月である3月と6月に定点調査を実施してきました。前回本欄で紹介した「面接選考の開始時期」と「内定出し開始時期」について、2017年卒採用からの8年間の推移を時系列にまとめてみたところ、面白い結果が得られましたので、紹介します。
 「面接選考の開始時期」について、就活ルールに配慮した採用活動を展開する企業の割合が多かった1001名以上の大企業の結果だけを抽出して、「3年生3月まで」と「4年生4月以降」の2区分に分けて集計し直し、年代別に並べたものが[図表1]です。2017年卒では、「3年生3月まで」に面接を開始する企業は26%と4社に1社程度の割合でしたが、2024年卒では実に80%にまで達しています。2024年卒では「4年生4月以降」に面接を開始する企業は2割にまで減少し、完全なる少数派です。2017年卒では、「4年生5月」「4年生6月」に面接を開始していた企業だけでも45%もあったことが信じられません。

[図表1]面接開始時期の推移(1001名以上)

[図表1]面接開始時期の推移(1001名以上)

資料出所:HR総研「2024年新卒採用動向調査」(2023年3月、[図表2~8]も同じ)

 2019年卒から2020年卒にかけて大きく早期化が進んだものの、新型コロナウイルス感染症が始まった2021年年卒ではいったん足踏みが見られます。企業と学生の双方が、想定していなかったオンライン化対応に手間取り、採用スケジュールに遅れが生じたためです。もしコロナ禍がなければ、「3年生3月まで」に面接を開始する企業はもっと早く8割になっていたかもしれませんが、オンラインの普及が早期化を後押しした面も否めません。

3月までに内定出しを開始する大企業は6倍に

 次に、「内定出しの開始時期」について、こちらも大企業のデータだけを抽出して、2017年卒採用から2024年卒採用までの推移を見てみましょう。前述の「面接選考の開始時期」と同様に、「3年生3月まで」と「4年生4月以降」の2区分に分けて集計し直した結果が[図表2]です。

[図表2]内定出し開始時期の推移(1001名以上)

[図表2]内定出し開始時期の推移(1001名以上)

 2017年卒では、「3年生3月まで」に内定出しを開始する企業はわずか10%でしたが、2020年卒では41%にまで膨れ上がり、コロナ禍により2021年卒でいったん25%まで後退したものの、2022年卒では50%に、2024年卒では60%にまで達しています。本調査は3月上旬に実施していますので、「4年生4月」に内定出しを予定していた企業が、他社の動向を見て予定よりも早めに内定出しを開始することも考えられ、実際にはさらに増えているかもしれません。たった7年間で実に6倍に増加しているのです。
 「面接選考の開始時期」もしかりですが、驚くべきは、途中で舵取り役が経団連から政府に代わったものの、この間、「就活ルール」の日程規定はまったく変わっていないということです。それにもかかわらず、このようなことが起こっているのが現実です。大卒求人倍率(リクルートワークス研究所)が伸びているとはいえ、かつてのバブル期のような3倍近い求人倍率になっているわけではなく、2024年卒でたかだか1.71倍に過ぎません。リーマンショック前の2.14倍にもまだほど遠い倍率にもかかわらずです。

インターンシップは再び夏期・春期休暇に集中

 ここからは、2025年卒採用に向けたインターンシップの動向を見ていきます。まずは、「インターンシップの実施予定」を聞いたところ、全体では「未定」とする企業が35%あるものの、「実施する」(「前年は実施していないが、今年は実施する」と「前年同様に実施する」の合計、以下同じ)は42%と4割を超え、「実施しない」(「前年は実施したが、今年は実施しない」と「前年同様に実施しない」の合計、以下同じ)の24%を大きく上回ります[図表3]

[図表3]2025年卒採用向けインターンシップの実施予定

[図表3]2025年卒採用向けインターンシップの実施予定

 大企業では、「実施する」は65%なのに対して、「実施しない」はわずか4%にとどまります。「実施する」とする企業は、301~1000名の中堅企業でも50%に達しますが、300名以下の中小企業は30%にとどまっており、「実施しない」企業(31%)と拮抗しています。いずれも「未定」の割合が約3~4割程度あり、「実施する」企業はさらに増えるものと推測されます。

 次に、「インターンシップの実施時期」を前年同時期に実施した2024年卒向けの調査結果と比較したものが[図表4]です。「3年生6月以前」から「3年生9月」といった早期は、軒並み2025年卒向けインターンシップを開催する企業の割合のほうが高くなっており、「3年生11月」と「3年生12月」は一転して、2025年卒向けのほうが低くなっています。2024年卒採用では大きく減少した「3年生2月」ですが、再び盛り返しを見せています。ただし、かつてのようにピークである「3年生8月」(62%)と肩を並べるほどではなく、その半分程度に過ぎません。

[図表4]2025年卒採用向けインターンシップの実施時期(複数回答)

[図表4]2025年卒採用向けインターンシップの実施時期(複数回答)

 一つ注目したいのは、採用広報が解禁となる「3年生3月」は会社説明会が正式にスタートすることもあり、これまでは3月以降にインターンシップを実施する企業はごくわずかでしたが、今回調査では前年の3%から16%へと大きな伸びを見せています。背景にあるのは、2025年卒採用より実施される、「産学協働による自律的キャリア形成の推進」の要件を満たすインターンシップであれば採用活動に堂々と活用できるという政府三省合意の規定です。実施期間が5日間以上であることや、その半分の日数を職場での就業体験に充てる必要があること、さらには夏期休暇・冬期休暇・春期休暇等の長期休暇期間中に実施することなどが条件になっています。

 ※タイプ3・汎用的能力活用型:5日間以上、専門能力活用型:2週間以上

 冬期休暇は年末年始を挟むため、実質的には要件を満たすインターンシップの実施は困難であり、結果的に夏期休暇と春期休暇に集中することになります。それが8~9月と2~3月の実施割合の増加につながっているものと推測されます。

「産学協働による自律的キャリア形成の推進」は機能するのか

 今度は、「インターンシップの日数タイプ」を前年調査と比較してみましょう。「半日程度」と「1カ月以上」は前年と同程度の割合ですが、残りすべての日数タイプで今回調査のほうの割合が高くなっています[図表5]

[図表5]2025年卒採用向けインターンシップの日数タイプ(複数回答)

[図表5]2025年卒採用向けインターンシップの日数タイプ(複数回答)

 特に、前述した「産学協働による自律的キャリア形成の推進」の要件に当たる「5日間以上(1週間程度)」は、前年の22%から32%へと10ポイントも上昇しています。「1週間程度」と回答した割合を、従業員規模別に前回調査と比較してみると、中堅企業26%→27%、中小企業25%→30%と微増にとどまるのに対して、大企業は10%→40%へと大幅に増加しています。これが全体の数字を引き上げた要因です。
 大企業に注目して、その他のタイプも確認してみると、「半日程度」と「1カ月以上」はほぼ前年と変わらず、「1日程度」が52%→22%へと大幅に減少し、その分、「2~3日程度」24%→30%、「2週間程度」14%→17%、「3週間~1カ月程度」0%→7%へといずれも増加しています。1Dayから複数日程タイプへのシフトが進んでいる様子がうかがえます。

 次に、「1週間程度」を選択した企業を対象に、「産学協働による自律的キャリア形成の推進」の要件を満たすタイプ3のインターンシップを実施する予定かを確認したところ、全体では「検討中」が43%で最多で、次いで「計画していない」32%、「計画している」は25%で割合としては最も低くなったものの、4社に1社は「計画している」ことが分かります[図表]。前項までに推察していたように、インターンシップを取り巻く今年の変化には、「産学協働による自律的キャリア形成の推進」への対応が大きく影響しているようです。

[図表6]「産学協働による自律的キャリア形成の推進」の要件を満たすインターンシップの実施

[図表6]「産学協働による自律的キャリア形成の推進」の要件を満たすインターンシップの実施

 従業員規模別では、「計画している」と回答した割合は、大企業33%、中堅企業25%、中小企業19%と、規模が大きいほど要件に沿ったインターンシップの実施を計画していることが分かります。ただ、「計画していない」と明言している割合は中堅企業が13%と突出して低く、「検討中」の企業が6割を超えることから、最終的には大企業を超える割合の企業が、「産学協働による自律的キャリア形成の推進」の要件を満たすインターンシップを実施する可能性もあります。
 これまでも、実際には多くの企業がインターンシップを採用手法の一つとして活用してきており、果たして「産学協働による自律的キャリア形成の推進」の要件を満たすことによる“お墨付き”に対して、企業がどこまでこの新しい仕組みを活用するのかと懐疑的になっていた面もありますが、意外にも変化が表れてきているようです。

対面型への揺り戻しが続くインターンシップ

 インターンシップの実施形式は、コロナ禍でオンラインに大きく舵を切った企業も少なくありませんでしたが、新型コロナ感染症に対する政府の見解がより“withコロナ”に転化していく中、新卒採用においても年々変化が表れています。前回の本欄でも取り上げたように、大企業の3割が「(対面型のインターンシップを)増加した」と回答するなど、「2024年新卒採用でより重要になると思われる施策」では「対面型インターンシップ」が3位にランクインしました。2025年卒採用ではどうでしょうか。
 ここでは「インターンシップの形式」に関する二つの設問の結果を紹介します。まずは、「2025年卒採用向けインターンシップの形式」です。全体では、「すべて対面型で実施」34%、「対面型とオンライン型を混合して実施」60%に対して、「すべてオンライン型で実施」はわずか5%にとどまります[図表7]

[図表7]2025年卒採用向けインターンシップの形式

[図表7]2025年卒採用向けインターンシップの形式

 従業員規模別に見ても大きな差異はなく、大企業7%、中堅企業8%、中小企業で3%といった具合です。2021年3月に実施した調査では、2022年卒採用向けのインターンシップの形式を「すべてオンライン型で実施」と回答した企業は3割を超えており、たった2年ですべての企業規模で大きく変化したことが分かります。
 その他の選択肢についても状業員規模別に見ると、「すべて対面型で実施」は大企業や中堅企業では2割前後なのに対して、中小企業では54%と半数を超えています。2年前の調査では、大企業や中堅企業はやはり2割前後でしたが、中小企業も3割程度だったことを考えると、中小企業での「インターンシップの対面化」がより進んでいることが分かります。受け入れ人数が比較的少ないことも対面化を図りやすい要因といえますが、せっかく接点を持った学生とのグリップ力をより強固にしたいという思いの強さともいえるのではないでしょうか。

 もう一つ、「対面型インターンシップ実施割合の前年比較」の結果を紹介します。全体では、「変化なし」が64%で圧倒的に多いものの、「増加する」(「大きく増加する」と「やや増加する」の合計、以下同じ)30%に対して、「減少する」(「大きく減少する」と「やや減少する」の合計、以下同じ)はわずかに1%あるのみです[図表8]。企業が「対面型」強化を加速している様子がうかがえます。

[図表8]対面型インターンシップ実施割合の前年比較

[図表8]対面型インターンシップ実施割合の前年比較

 従業員規模別に見ると、特に大企業でこの傾向は強く、「大きく増加する」14%、「やや増加する」31%の合計45%、半数近くの企業が「増加する」としています。コロナ対策としていち早くオンライン化を進めたのが大企業であり、いまその揺り戻しが来ているといえるでしょう。2025年卒採用においても、「対面型のインターンシップ」が重要施策として考えられているようです。

課題山積の新卒採用活動

 新卒採用に関する採用担当者からのフリーコメントの一部を抜粋して紹介します。皆さんはどんな感想をお持ちでしょうか。

  • 学生の情報収集方法や就職することに何を求めているのかを都度収集していく必要がある(1001名以上、情報・通信)
  • 年々キャリア形成よりも安定を求める傾向を感じる(1001名以上、商社・流通)
  • 政府主導で、形骸化している就職協定を見直してほしい(1001名以上、メーカー)
  • 採用支援企業の営業が過熱しすぎて就職活動が前倒しになっている。会社が疲弊して、採用に無駄な工数やコストが発生している(1001名以上、メーカー)
  • 入社してからの教育研修もセットで考えなければいけないが、正直そこまで手が回っていない。まだ若手の離職が出ていないが、疲弊している人もいる。入社後も課題が多い(301~1000名、商社・流通)
  • 育成を前提とした採用方式から、能力を活かして伸ばす採用への変革が求められている(301~1000名、情報・通信)
  • 年々スケジュールが前倒しになっており、複数年度の活動が重なってきている。学生も早期に意思決定する集団と、じっくり決めたい集団に分かれており、それぞれに対応するのが困難になってきている(301~1000名、メーカー)
  • 「一括採用自体に無理がある」という気が年々してならない(301~1000名、メーカー)
  • 採用環境はコロナ禍前に完全に戻ったように思っています(301~1000名、サービス)
  • 全般的に働くことへの強い意志が感じられない(301~1000名、サービス)
  • 早期化が止まらず、企業側もつなぎ止めに苦労するが、学生側も負荷が高いと思う(300名以下、商社・流通)
  • オンライン授業が多かったことにより、学生の考え方のベースが変わっているように思う。学生へのアプローチで対面が良いかオンラインが良いかは、学生に合わせて対応しないといけない(300名以下、情報・通信)
  • 中小企業は年々難しい立場になっているように感じる。 コロナ禍が終わるとそれはより顕著に現れるのではないかと思う(300名以下、メーカー)
  • 大手企業では大学新卒の初任給を大幅に引き上げるという記事をよく目にしますが、終身雇用を前提とした採用を続けていいものかという若干の疑問(疑念)は持っています(300名以下、メーカー)
  • 学生の皆さんとの交流を通じて、社員が前向きな気持ちをもらえていると感じます。人材確保という主目的に加え、従業員のやりがいUPにも活用していきたいと思います(300名以下、メーカー)
  • 年々母集団形成が難しくなっている。学生からは「選考が早すぎる」「まだ準備が整っていない」などの声をよく聞くが、早く動き出さないと他社に囲われてしまう(300名以下、メーカー)
  • 給与と休日を重視している学生が多い。根拠のない自信は、どこから来ているのだろう。社会(会社)が甘すぎる(300名以下、メーカー)

4社以上のインターンシップ参加者が過半数に

 さて、ここからは就活生を対象に実施した「2024年卒学生の就職活動動向調査」の結果を見ていきます。まずは、「インターンシップ参加社数」です。文系と理系を比べてみると、文系では「10社以上」が最多で24%と4人に1人となっており、次いで「4~6社」18%、「3社」14%などが多くなっています[図表9]

[図表9]インターンシップ参加社数

[図表9]インターンシップ参加社数

資料出所:HR総研×楽天みん就:「2024年卒学生の就職活動動向調査」(2023年3月、以下図表も同じ)

 一方、理系で最多は「4~6社」25%で、次いで「10社以上」20%、「3社」16%などが多くなっています。「4社以上」(「4~6社」~「10社以上」の合計、以下同じ)では、文系と理系がいずれも53%で半数を超えており、積極的に多くの企業のインターンシップに参加している様子が分かります。

 インターンシップを「対面型」と「オンライン型」に分けて参加社数を聞いたところ、対面型では「10社以上」は文系3%、理系1%と極めて少数派であり、「4社以上」に広げても、文系13%、理系11%と1割強しか参加していません[図表10]

[図表10]対面型インターンシップ参加社数

[図表10]対面型インターンシップ参加社数

 文系では、「0社(応募をしていない)」が29%で最も多く、「0社(応募はした)」を合わせると、参加経験のない学生が38%と4割近くにも及びます。理系も34%の学生が参加経験なしです。オンライン型と比べて対面型のインターンシップは受け入れ人数が少なくなりがちです。その分、企業は応募学生を事前に絞り込まざるを得ず、学生からすれば応募しても事前選考で不合格となってしまうことが少なくありません。「0社(応募はした)」が、文系10%、理系では13%にも上ることも、対面型インターンシップの特徴です。
 参加した社数では文系・理系ともに「1社」が最も多く、次いで「2社」が続き、両方を合わせると、文系で40%、理系では47%となるなど、参加社数が少ないのも特徴です。逆にいえば、対面型で学生と接点を持つことができたこれらの企業は、学生に強いインパクトを残すことができたものと推測されます。

 一方、オンライン型では、「10社以上」が文系・理系ともに12%あるのをはじめ、「4社以上」に参加した学生は文系41%、理系40%と4割にも及び、参加経験のない学生はいずれも24%に減少します[図表11]

[図表11]オンライン型インターンシップ参加社数

[図表11]オンライン型インターンシップ参加社数

 参加した社数では、文系・理系ともに「4~6社」が最多となり、それぞれ15%、23%となっています。対面型で最多だった「1社」との回答は、文系では9%にとどまり、割合は最も低くなっています。理系では、「1社」は14%で「4~6社」に次ぐ割合となっています。

理系向け、10月のインターンシップは鬼門か

 今度は、「インターンシップ参加時期」について、文系・理系別に、さらに対面型とオンライン型を比較しながら見ていきましょう。それぞれの形式ごとにインターンシップへの参加経験のある学生だけに絞って集計していますので、対面型とオンライン型の回答母数は異なります。ご注意ください。
 まずは、文系からです。対面型・オンライン型で差が見られなかったのは、「2022年6月以前」と「2023年3月」で、それぞれ16%、8%でした[図表12]。残りの時期はすべてオンライン型が対面型を上回っているものの、月ごとの増減の傾向はほぼ似通ったものとなりました。

[図表12]インターンシップ参加時期(文系、複数回答)

[図表12]インターンシップ参加時期(文系、複数回答)

 参加者割合がもっと高かったのは「2022年8月」で、対面型41%、オンライン型53%となり、次いで「2022年12月」もそれぞれ41%、50%と、ほぼ近い割合になっています。前回の本欄で紹介した「2024年新卒採用動向調査」結果では、企業のインターンシップ実施時期は「8月」(57%)が突出しており、「12月」(41%)とはやや開きが見られましたが、学生の参加割合は同程度となっています。就職活動を開始している学生が増加し、1社当たりの参加者数が多かったものと推測されます。「8月」より「12月」のほうが、インターンシップ応募学生を集めやすそうです。
 また、「2024年新卒採用動向調査」では、「9月」(30%)、「10月」(27%)、「11月」(30%)、「1月」(30%)は、「8月」と比較して実施企業の割合が半分程度になっていたのに対して、学生の参加割合は「8月」と比較してそれほどの減少は見られません。「8月」はインターンシップ実施企業が多く、応募学生の熾烈な争奪戦になるのに対して、それ以外の月は実施企業がそれほど多くなく、効率的に応募学生を集めることができそうだと推測できます。先に挙げたように、「産学協働による自律的キャリア形成の推進」要件に合致させるには、長期休暇、すなわち夏期休暇中に実施する必要があります。「8月」よりは「9月」に実施するほうが良さそうです。さらに、「産学協働による自律的キャリア形成の推進」要件にこだわらないのであれば、「10月」「11月」「1月」などもねらい目となってきます。

 一方の理系ですが、ほぼすべての時期でオンライン型が対面型を上回っている点は文系と似ているものの、一部では異なる様相も呈しています[図表13]。例えば、「8月」のオンライン型は61%と際立って高く、文系の53%と10ポイント近くも高くなっています。翌「9月」は文系の49%とほぼ同程度の51%なのに対して、「10月」は文系の44%より6ポイント低い38%となっており、結果的に8月から10月にかけては23ポイントも減少しています。ちなみに、この間の文系の減少幅は9ポイントに過ぎません。

[図表13]インターンシップ参加時期(理系、複数回答)

[図表13]インターンシップ参加時期(理系、複数回答)

 対面型の参加割合はもっと極端です。8月から10月にかけての減少幅は、文系の10ポイントに対して、理系は実に34ポイントと、3倍を優に超えます。10月の参加率はわずか11%(文系31%)しかありません。原因として考えられるのは、学生が出席する必要がある学会の開催が多かったのかもしれません。10月に就職活動が制限されることを見越して、余裕のある8月中にインターンシップへの参加が集中したとも考えられます。
 来年度以降、対面型でのインターンシップをさらに強化する企業が増えるものと予想されますが、理系学生をターゲットにする場合、実施時期は10月を避けたほうが良さそうです。

1週間以上を希望する学生も多い理系

 最後に、インターンシップの形式別に「最も望ましいと考える日数タイプ」を取り上げます。文系と理系では回答の結果が異なりましたので、別々に見ていきます。まずは、文系の結果からです[図表14]

[図表14]インターンシップで最も望ましい日数タイプ(文系)

[図表14]インターンシップで最も望ましい日数タイプ(文系)

 対面型、オンライン型を問わず、「1週間程度タイプ」や「2週間以上タイプ」を望む割合は低く、対面型の「1週間程度タイプ」ですら8%と1割を切ります。対面型で最も多いのは「半日・1日タイプ」56%で半数を超え、次いで「2~3日タイプ」が34%です。オンライン型では、「半日・1日タイプ」を推す声が圧倒的に多く、76%と4分の3以上に上り、「2~3日タイプ」は2割未満となっています。
 理系の結果を見ると、オンライン型では、「半日・1日タイプ」が文系よりも10ポイント低い66%となるも、「2~3日タイプ」は4ポイント高い23%となり、合わせると文系に近い9割近くが短期タイプを望んでいます[図表15]

[図表15]インターンシップで最も望ましい日数タイプ(理系)

[図表15]インターンシップで最も望ましい日数タイプ(理系)

 一方、対面型は「半日・1日タイプ」が34%と3分の1程度にとどまり、「2~3日タイプ」も29%で文系よりも少なく、短期タイプを希望する割合は6割超と、文系とは30ポイント近い差となっています。その分、「1週間程度タイプ」は22%と2割を超え、「2週間以上タイプ」も15%と、両方を合わせれば4割近くにまで膨れ上がります。理系向けにインターンシップを実施する場合には、実施時期もさることながら、対面型で実施する場合には、さらに日数タイプも吟味したほうが良さそうです。

寺澤 康介 てらざわ こうすけ
ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長
86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。
https://www.hrpro.co.jp/