経営人材育成は、長い間人事課題の上位に挙がっているテーマの一つです。2021年6月に改訂された「コーポレートガバナンス・コード」においても、上場企業の責務としてその重要性を指摘している一方、経営人材を順調に育成できていると認識している企業はいまだ多くないとみられます。
こうした現状を捉え、今回の本誌特集では、自社の置かれた経営環境を適切に把握し、経営戦略との連動を重視しつつ、育成施策を立案・運営している大手3社を取材し事例紹介しました。ここでは取材企業の取り組みポイントを要約してご紹介します。
●三井化学
海外展開の加速に伴う新たな経営戦略の策定に連動し、多様性に富む経営者候補の戦略的獲得・育成・リテンションを人材戦略の優先課題に据え、2016年度から「キータレントマネジメント」を導入。経営者として必要な資質を明確に定義した上で、将来の経営陣幹部層の早期選抜と戦略的育成の推進を目的とし、後継者計画策定の中心に位置づけている。
毎年度、人材育成委員会を開催し、経営者候補等を選抜、個別育成計画の策定や戦略的配置等を行う。キータレントや経営者候補の選抜に当たっては、「業績」「潜在能力」「熱意」の3軸を用いる。経営者候補に必要な経験として、①経営的視野、②事業再構築、③新事業開発、④全社横断プロジェクト、⑤海外経験の五つを挙げ、各候補者の育成計画を立てている。
●マルハニチロ
イノベーションを生む企業風土の醸成のため、部門を超え広い視点で事業を捉えられる中核人財の中長期的な育成施策として、人事部主体で選抜した対象者向けの経営リーダー人財育成プログラム(MMP)を2018年度から実施。プログラムは、①選抜→②育成→③経験の三つのフェーズで構成。①選抜(フェーズ1)の集合研修内で実施する外部講師によるアセスメントや、経営人財としての適性検査等を経て選抜されたメンバーのみが②育成(フェーズ2)以降に進むことができる。各フェーズは1年ずつ、計3年のプログラムであり、MMP対象者は、経営人財の選定を行う人事委員会が人財プールで管理する。さらに、2020年度からはキーポジション(部長)の後継者育成プログラム(MSP)を実施している。
●東京海上ホールディングス
国内外で事業展開を進める中、グループシナジーを高めていくために、高度な経営力の源泉となる質の高い人材の継続的育成を進める。経営人材育成の主なプログラムは国内・海外別、対象階層別に主に6種類で構成。国内人材向けには、主に「経営スクール」「経営フォーラム」「新任執行役員研修」の3種類を用意している。一方で、グローバル人材向けのプログラムは「Global Executive Program」「Middle Global Leadership Development Program」「KAGAMI21」の3種類から成る。研修の特徴は、プログラムに “非日常体験” や “内省” を組み込んでいること、およびCEO・社長をはじめとした経営陣が積極的に関与していることである。
事例3社の経営人材育成の取り組み概要
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『労政時報』第4053号(23.3.24)の特集記事 1.経営人材の選抜・育成策(企業事例・インタビュー) 2.労働関係法律─基本解説 第3回 休日労働 3.メンタルヘルス判例研究シリーズ:産業医、弁護士から見た判断のポイントと対応の留意点(第35回) 4.先進企業の人事トップインタビュー 第3回 ソフトバンク株式会社 ※表紙画像をクリックすると目次PDFをご覧いただけます |
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