事業のさらなる発展やビジョン実現に向け人事制度の見直しを進める企業の多くは、評価制度についても何らかの見直しを加えています。特に、コロナ禍でテレワークが普及したことに伴い、職場レベルにおけるマネジメントの在り方が一変したことも、評価制度の見直しのきっかけの一つとなっています。
本誌第4035号(22.5.13/5.27)では、こうした人事制度改定の一環として近年、評価制度を見直した企業3社の取り組みについて取材しました。
■掲載3社事例の概要
[1]サッポロビール
❶主要グループ会社の人事制度を共通化:2020年1月、長期経営ビジョン実現に向けて、主要グループ会社の人事制度を共通化。「評価制度の抜本的な改定」「社員の主体性を重視」「内向きから外向き・未来向きへ」をキーワードに、経営職(管理職)への職務等級制度の導入などを推進
❷"ノーレイティング"の導入:年間考課ランク付けを廃止して"ノーレイティング"とし、管理職のマネジメントスタイルを管理視点から1on1による"支援型"マネジメントへシフト
❸育成評価制度:評価制度の名称を「育成評価制度」に変更。スキル発揮度合いを確認する「スキルレビュー」、組織目標への貢献度を評価する「パフォーマンスレビュー」、挑戦的な目標を掲げる「ストレッチゴール」の三つで構成。これを基に、各事業場で「人財育成会議」を開催し、役割変更(昇格・降格)を行う
❹評価に基づき処遇に「アドオン」:一般社員については、月例給与(役割給)、賞与ともに「ベース」(定額部分)と「アドオン」(評価に基づく変動部分)に区分。現場の長に処遇決定の裁量を付与し、成果を出した人にアドオンして報いる姿勢を明確化
[2]ライフネット生命保険
❶新人事制度「Challenge & Growth 1.0」:事業成長のためには下支えする人事制度の構築が必要だと考え、"挑戦と成長が組織の中に満ちあふれている組織"をつくるための制度変更を検討し、2018年4月に導入
❷評価制度の内容:期初に目標設定する業績貢献度と成長度評価、期末に評価のみ行うビヘイビア(行動、態度、振る舞い)の3軸で評価。1年間を1サイクルとして制度を運用
❸成長度評価:社員個々人が"1年間でどういう成長を果たしていくのか"を自分自身で考え、目標設定。成長度目標は大きくスキルとマインドに分けられ、1年間でどれだけの"差分"を作るかが評価対象となる
❹評価結果の処遇への反映:評価結果は、基本給改定、業績連動賞与の個人配分、昇格判定に反映。管理職等の上位グレードの社員については原則評価昇給を行わず、賞与の評価反映ウエートをより大きくする一方、スタッフ職群(非管理職層)の社員は、毎年の成長自体に報いるため、評価に応じて基本給を改定
[3]みんなのマーケット
❶コロナ禍でフルリモートワークに移行:2020年のフルリモートワーク導入を機に、純粋に成果だけに集中できる環境を整備するため人事評価制度を改定。目標管理をベースに、達成度に応じて評価がデジタルに決まる仕組みとする
❷リーダー制の導入:従来は本部長が配下の全メンバーの個人目標を確認してきたが、評価制度の改定とともにリーダー制を試験的に導入。目標設定の際、各チームのリーダーがメンバーをサポートする
❸エンジニアチームの評価制度:エンジニアチームは他職種と異なり、目標管理による評価は行わず、技術力を相互評価する仕組みを取る。最終的な評価は他職種の社員と同様、100点満点でスコア化
❹グレード制の導入:組織が拡大する中、給与水準ごとに求める能力・スキル要件を明確にするため、2021年より試験的に導入。目標設定において、能力・スキルに応じた難易度の設定をしやすくする
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『労政時報』第4035号(22.5.13/5.27)の特集記事 1.評価制度を巡る新たな取り組み事例 2.今国会で成立した労働関係法案―雇用保険法等の一部を改正する法律のポイント 3.2022年賃上げ・夏季一時金妥結状況 4.〈速報〉2022年度決定初任給の水準 [付録]実務に役立つ法律基礎講座(82)在宅勤務 ※表紙画像をクリックすると目次PDFをご覧いただけます |
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