2020年01月24日掲載

BOOK REVIEW - 『労働・職場調査ガイドブック』

梅崎 修、池田 心豪、藤本 真 編著
A5判/260ページ/定価2700円+税/中央経済社 


BOOK REVIEW 
人事パーソンへオススメの新刊



 本書は、大学生・大学院生や研究者が労働・職場調査を実施する際に用いる手法を、網羅的に紹介したものだ。この本が編まれたのは、労働というテーマの特殊性に基づいている。つまり、労働や職場がさまざまな学問分野で調査対象となった結果、既に多彩な調査方法が用いられている一方で、先行研究や理論体系も蓄積されており、初学者にとって見通しがききにくい分野になっているため、調査手法を数多く紹介した本が必要であると編者が考えたことによる。

 紹介されている調査の手法は、第1部の質的調査と、第2部の量的調査に分けられる。前者では10種類、後者では6種類の手法を紹介するとともに、各章の執筆者が実施に行った調査の事例が概説されており、手法を使う際のイメージがわきやすい構成となっている。また、第3部「調査の道具を身につける」では、文献・資料の調べ方から、調査対象との「人付き合い」まで幅広く目配りをしている。

 実務に携わる人事にとって、この本を読むことで得られる収穫は何だろうか。最も大きな点は、企業内で仕事をするだけでは身につけられない視点を学ぶことで、現場の理解をいっそう進められることだろう。「労働をめぐる議論は、いつも現場と乖離(かいり)したものとなっている」と編者は研究者に向けて警鐘を鳴らしているが、企業内人事も同じく労働問題を正確に認識した上で議論する必要がある。人事が目の前の問題を客観視し、より正確に理解するための一助としても、本書は十分に役立つはずだ。

 



労働・職場調査ガイドブック

内容紹介

質的・数量的分析の手法をコンパクト&わかりやすく解説。手法ごとに執筆者が実際に行った調査の内容や経験談を紹介。情報の集め方や職場見学の留意点など便利な知識が満載。新しい時代の労働・職場調査の教科書。さまざまな手法と道具を知って、調査の世界に飛び込もう!