2019年05月08日掲載

採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント - 2019年5月


ProFuture株式会社/HR総研
代表 寺澤康介
(調査・編集: 主席研究員 松岡 仁)

 ProFuture代表の寺澤です。
 4月22日、経団連と大学側が新卒・既卒を問わない専門スキル重視の通年採用を拡大することで大学側と合意したと報じられました。同日午前に開催された「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」で提言をまとめ、方針を示しています(公表資料はこちら)。その提言の中で、今後の雇用システムや採用のあり方について、以下が列記されています。

・新卒一括採用(メンバーシップ型採用)を維持しつつ、ジョブ型雇用を念頭においた採用も含め、複線的で多様な採用形態に、秩序をもって移行すべき。

・学生の学修経験時間の確保を前提に、学生の主体的な選択や学修意欲の向上に資する就職・採用方法と、質の高い大学教育を企業と大学の共通理解によって実現していく。

・企業は、ダイバーシティを意識して、外国人留学生や日本人海外留学経験者を積極的に採用する方向。また、ジョブ型採用の割合が増大し、グローバルな企業活動が拡大する中で、大学院生を積極的に採用する方向。

・学修成果の評価:より高い専門性を重視する傾向となれば、卒業・学位取得に至る全体の成果を重視すべき。卒業要件の厳格化を徹底すべき。

 政府の未来投資会議でも今後の中長期的な採用のあり方を検討しており、今回の経団連と大学側の提言は、今年夏にまとめられる予定の成長戦略にも反映される見込みとのことです。
 さて、こうした動きは、実際の新卒採用活動に対してどのような影響を与えるでしょうか。報道の受け止め方によっては、「新卒一括採用から通年採用へ移行」と考える方もおられると思いますが、それは誤りです。今回の提言では「新卒一括採用を維持しつつ」としている点が重要です。通年採用への完全移行を提言しているのではなく、新卒一括採用だけでなく、ジョブ型採用が可能な専門スキル保有者やキャリア、留学生・外国人などを対象とした「通年採用も並行して」実施することを提言しているにすぎません。「新卒一括採用」と「通年採用」の二者択一を企業に求めているわけではないということです。
 ただ、「通年採用」という言葉にはいろいろな解釈があり、多くの場合、「いつ採用活動を行ってもよい」という意味に置き換えられるケースが多々見られます。実際のところ、新卒一括採用だけでなく通年採用を多くの企業が取り入れるようになったとしても、卒業後の採用が増えるというような動きだけにはなり得ず、かえって早期化を助長する動きとなることは、ほぼ間違いないと言えます。
 また、こうした動きの根底で、採用がより自由競争の方向に進んでいることは間違いありません。まさに、採用版「VUCAの時代」(先行きが見通せない状態)と言えるでしょう。自社の採用戦略を根本から見直し、独自の採用戦略を構築する必要があります。

大卒求人倍率が8年ぶりに低下

 4月24日、リクルートワークス研究所より、「第36回 ワークス大卒求人倍率調査(2020年卒)」が発表されました。2020年3月卒業予定の大卒求人倍率は、前年の1.88倍から0.05ポイント低い1.83倍で、8年ぶりの低下となりました。前回の本稿で、HR総研の企業採用動向調査から、「新卒採用の需給バランスが、大きな転換点を迎えているように感じます」と述べましたが、ワークス研究所の大卒求人倍率でもこれまでの上昇基調から一転しての「8年ぶりの低下」という結果が示されています。東京五輪後の景気悪化を懸念する声は以前からありましたが、それを1年先取りした結果となっているようです。
 企業の求人総数は、前年の81.4万人から80.5万人へと0.9万人減少したのに対して、一方の民間就職希望の学生数は、前年の43.2万人から44.0万人へと0.8万人増加し、求人に対して36.5万人の人材不足(前年は38.1万人の人材不足)となっています。求人総数の減少の背景は、中小企業が新卒採用難から新卒の求人総数を縮小し、中途採用を拡大したと考えられているようです。

※リクルートワークス研究所公表の調査報告書はこちら

 同調査による大卒求人倍率を従業員規模別に見ると、「300人未満」の企業では過去最高だった前年の9.91倍から1.29ポイント低い8.62倍となったほか、「300~999人」も前年の1.43倍から0.21ポイント低い1.22倍になっています。一方、「1000~4999人」は前年の1.04倍から1.08倍へ、「5000人以上」は前年の0.37倍から0.42倍へと、それぞれ0.04~0.05ポイント上昇しています。中堅・中小企業の求人倍率が低下し、大企業の求人倍率が上昇したことで、企業規模別の求人格差はわずかですが緩和されたことになります。それでも数字の上では、「5000人以上」の企業では「売り手市場」どころか「超買い手市場」の状況が依然続いています。

大企業の2割が親対策を実施

 ここからは2020年および2021年新卒採用・就職活動の最新動向に焦点を当て、HR総研が3月18~27日にかけて企業の採用担当者を対象として実施した「2020年新卒採用動向調査」と、3月18~25日にかけて2020年卒業予定の大学生(「楽天みん就」会員)を対象として実施した「2020年就職活動状況調査」の結果を併せて紹介します。
 まずは、「2020年新卒採用動向調査」の中から、「親対策」について取り上げます。近年、就職活動への親の関与度は年々高まりを見せており、入学年次から新入生の親を対象としたキャリアセンター主催の就職ガイダンスを開催する大学も増えています。いまの大学生の親の中には、バブル期に就職活動を経験した人も多いため、当時とでは就職を取り巻く環境がまったく異なっていることを早くから理解してもらうとともに、就活へのサポートを依頼する内容になっているようです。
 また、内定辞退の理由として、「親の反対」を挙げる学生が目につくようになっていることから、企業の中には学生本人だけでなく、その親を対象とした施策を実施する企業があります。2020年卒採用での実施状況を聞いたところ、全体では14%の企業が「実施している」と回答していますが、企業規模別で見てみると、中堅企業の10%、中小企業の14%に対して、大企業では19%と最も多くなっています[図表1]。親対策というと、知名度の低い中小企業が熱心に実施しているイメージがあるかと思いますが、実際には大企業の実施率のほうが高くなっているのです。

[図表1] 「親対策」の実施状況

資料出所:HR総研/ProFuture「2020年新卒採用動向調査」(2019年3月、以下[図表6]まで同じ)

 具体的な施策内容としては、「挨拶状や会社案内・社内報の送付」という企業が多くなっていますが、中には「投資家向けガイドブック」や「新聞の特集」「手書きの手紙」「自社製品」「年末に蕎麦」という企業もあります。また、中小企業の中には「親の反対があったら社長が挨拶に伺う」「内定承諾書に親のサインをもらう」という企業もありました。内定辞退対策としてだけでなく、入社式に親を招待するなど、入社後も親対策を実施するケースもあります。

「インターンシップ実施せず」を決めている企業は2割強

 次に、2021年卒採用を視野に入れたインターンシップについて見ていきましょう。まずは、インターンシップの実施予定を聞いてみたところ、大企業の73%、中堅企業の60%、中小企業でも43%が「実施する予定」と回答しています[図表2]

[図表2] 2021年卒向けインターンシップの実施

 中小企業では32%が「未定」と回答するなど、企業規模が小さいほど「未定」の企業の割合が多く、さらに「実施する予定」の企業は増える可能性があります。「前年同様に実施しない予定」とすでに決定している企業は、大企業で14%、中小企業でも25%しかありません。「前年は実施していないが、今年は実施する予定」とする企業は今のところ中小企業の一部に見られるだけとなっていますが、「前年は実施したが、今年は実施しない予定」とする企業はどの企業規模でも1社もないことは注目に値します。インターンシップは、導入した企業にとってはもはや外すことのできない、基本的な採用施策となっています。
 次に、インターンシップの実施時期について見てみましょう[図表3]。例年、早期の調査では「8月」がトップになることがほとんどですが、今回の調査ではこの段階ですでに「2月」が61%でトップとなっています。中堅企業に至っては、全体よりも14ポイントも高い75%が「2月」に実施すると回答しています。

[図表3] 2021年卒向けインターンシップの実施月(複数回答)

 次に多いのは55%の「8月」ですが、中堅企業に注目して見ると、こちらは逆に46%と全体より9ポイントも低くなっています。次いで多いのは「1月」で、全体では49%、中堅企業は58%と9ポイントも高くなっています。採用に直接つながりやすいのは、フォロー期間が長くならざるを得ない「8~9月」の早期よりも、「1~2月」のインターンシップであると言われており、中堅企業はそれを実践する企業の割合が多いと言えそうです。
 一方、中小企業は全体の傾向と近い傾向を示していますが、「9月」については全体よりも11ポイントも高い49%もの企業が実施を予定するなど、時期を問わず積極的な姿勢が伺えます。
 注目すべきは、「12月」に実施予定としている企業が、規模を問わず4割近くあることです。早期でもなく、「1~2月」より少しだけ早めに実施したいという企業の思惑が現れています。それともう一つ、大企業では「7月」に実施する企業が24%と、4社に1社の割合にまで高まっていることも見逃してはなりません。多くの企業のサマーインターンシップが集中する「8~9月」に先駆けて実施することで、競合企業が少なく、優秀な学生をより受け入れやすくしようと考えているようです。

大企業で1Dayタイプが主流になる一方で、中小企業は長期タイプも模索

 続いて、実施予定のインターンシップのタイプ(期間)を聞いてみたところ、圧倒的に1Dayタイプ(半日~1日程度)のインターンシップが多くなっています[図表4]。最も多い「1日程度」タイプを予定している企業は全体で59%、企業規模別では大企業が最も多く、67%と3分の2に及びます。「半日程度」のタイプを予定している大企業は29%と他の企業規模よりは少なくなっていますが、1Dayタイプのいずれかを予定している企業は全体で84%、大企業でも76%に達します。

[図表4] 2021年卒向けインターンシップの実施タイプ(複数回答)

 逆に、1Dayタイプを実施しない企業の割合は、大企業で24%、全体では16%にすぎません。特に、中堅企業では1Dayタイプを実施する企業の割合が高く、実に92%に達します。先の[図表3]と併せて見ると、実施時期は「1~2月」と遅めで、1Dayタイプで人数を集めるやり方が中堅企業の特徴のようです。効率性を重視していると言えます。中堅企業では、「1週間程度」タイプや「2週間程度」タイプの実施割合も相対的に低く、いずれも大企業や中小企業よりも10ポイント以上低くなっています。
 中小企業では、「2週間程度」タイプのインターンシップを実施している割合が18%と大企業(14%)よりも高くなっているほか、「3週間~1カ月程度」タイプが6%、「1カ月以上」タイプが9%と、いずれもどの企業規模よりも高くなっています。1Dayも実施する一方で、「複数日程~長期」タイプのインターンシップを実施する企業も53%と過半数に達するなど、自社に適したインターンシップを模索する動きが最も盛んであると言えそうです。

早期化に拍車がかかる中小企業の新卒採用

 自社の2021年新卒採用活動スケジュールの予定を回答してもらったところ、最も多かったのは「ほとんど変わらない」とした企業で、全体で66%と3分の2の割合でした[図表5]。ただし、次いで多かったのは、「1カ月超早まる」とした企業で、全体で17%という結果でした。

[図表5] 2021年卒向けの採用活動スケジュール

 企業規模別に見ると、経団連による縛りが解かれる大企業でもっと早期化が進むかと思われましたが11%と意外と少なく、中堅企業が15%、中小企業では20%と、企業規模が小さくなるほど前倒し傾向が強くなっています。大企業が早くなると見越してのスケジュールなのかもしれません。「1週間以内早まる」から「1カ月超早まる」とした企業の合計、つまり「早まる」と回答した企業は、全体で29%、企業規模別では大企業で27%、中堅企業で25%、中小企業で31%となっています。ちなみに、「遅くなる」と回答した企業は皆無でした。

意外と進まない「通年採用」

 政府が採用スケジュールの維持を打ち出してはいるものの、経団連が自主的に設定していた指針を廃止すると表明した影響は少なくないでしょう。ただ、1年目の2021年卒採用では若干の時期の早期化が予想されるものの、中長期的に見て「通年採用」への動きは加速するものでしょうか。ここでは、4月22日の「産学協議会」の提言にあるような、「新卒一括採用」と「通年採用」の併用ではなく、二者択一としての新卒採用の「通年採用化」の可能性について聞いてみました[図表6]

[図表6] 通年採用への移行予定

 「すでに通年採用を実施している」企業が15%ありましたが、残りの企業はどう考えているのでしょうか。最も割合が多かったのは、「いずれ通年採用を実施すると思う」の39%で、次いで「通年採用に移行することはないと思う」の36%、「2021年卒採用から通年採用を実施予定」とする企業はわずか4%にとどまりました。
 「いずれ通年採用を実施すると思う」企業においても、「いずれ」はどの程度の期間をイメージしているかは回答企業によってバラバラでしょう。数年以内をイメージしている企業もあれば、10年から20年というスパンで考えている企業もあるでしょう。「いずれ通年採用を実施すると思う」企業が4割近くあるとは言え、経団連が手を引くことで一気に採用戦線が様変わりすることはなさそうです。今回の「産学協議会」の提言にあるように、目安となる時期の論争はあるとはいえ、「新卒一括採用」は当分なくならないと考えたほうがよさそうです。

相談相手として頼られていない「父親」

 ここからは、2020年卒業予定の大学生を対象として実施した「2020年就職活動状況調査」の結果を抜粋して見ていきます。まずは、先の「親対策」にも通ずる設問として、「就職のことでよく相談する人は誰か」を聞いたところ、文系・理系ともにトップは「友人」で6割以上の学生が選択しています[図表7]。次いで多かったのは「母親」で、文系では42%、理系でも36%に上ります。「父親」は、文系で26%、理系でも25%と同程度の割合になっていますが、理系では「大学の先輩」が35%(文系は26%)で「父親」よりも上にいます。理系では、研究室を通じてのタテのつながりが強く、それがこの結果となっているのでしょう。

[図表7] 就職のことでよく相談する人(複数回答)

資料出所:HR総研/ProFuture「2020年就職活動状況調査」(2019年3月、以下図表も同じ)

 「母親」と「父親」のポイント差は、文系で16ポイント、理系でも11ポイントもあります。「父親」は、子どもの就職という一大イベントにおいて、相談相手として頼られていないという悲しい現実、残念ながらこの傾向は調査開始以来ほとんど変わっていません。「親対策」の施策も、「母親」を主眼に置いた取り組みを考える必要がありそうです。

6割以上の学生が3社以上のインターンシップに参加

 次に、インターンシップへの参加状況を前年の同時期調査のデータと比較してみましょう[図表8]。文系、理系ともに、参加社数が少ない学生の割合が減少し、社数が多い学生の割合が増加しています。

[図表8] インターンシップ参加社数

 参加「0社」の学生の割合はそれほど大きな変動はなく、参加率は微増にとどまっていますが、全体の参加社数が増加したことで、延べ参加者数は大きく伸びていると言えます。文系・理系別に見ると、文系では「1~2社」の割合が5ポイント減少し、「10社以上」の割合が7ポイントも増加しています。理系の差異はもっと大きく、「1社」の割合が8ポイント、「2社」の割合が4ポイントと、「1~2社」の合計では12ポイントも減少し、「3社」が2ポイント、「4~6社」が4ポイント、「10社以上」は8ポイントも増加し、前年の倍の16%にもなっています。「3社」以上のインターンシップに参加した学生の割合は、文系・理系ともに63%にも達しています。
 当然、複数の企業のインターンシップに参加すれば、その内容を比較することにもなりますので、企業としてはインターンシップをただ実施すればいいという問題ではなく、他社のプログラムとの差別化、優位化を図る必要が出てきています。また、ここでいうプログラムとは、当日の内容や運営方法はもちろんのこと、募集方法、事前選考方法、実施後のフォローに至るまでのトータルで設計する必要があります。応募者への連絡方法も重要となってきます。

12月のインターンシップが狙い目

 インターンシップに参加した時期を見ると、「2018年6月以前」「2018年7月」といった早めの時期は文系の参加率が相対的に高くなっていますが、「2018年8月」以降は文系・理系による差異はそれほど大きくないようです[図表9]。最も参加者割合が多かったのは「2019年2月」で、文系・理系ともに55~56%と過半数の学生が参加しています。次いで、企業の月別実施割合と比例するように、「2018年8月」が多くなっています。

[図表9] インターンシップに参加した時期(複数回答)

 注目すべきは「2018年12月」の参加者割合でしょう。「2018年12月」の実施企業の社数は「2019年1月」より少なかったはずなのに、参加者割合では「2018年12月」と「2019年1月」ではほとんど変わりません。企業にとっては、「2019年1月」よりも「2018年12月」のほうが集めやすかったと言えます。
 もっとも、「1月」に後期試験を実施する大学も多く、通常の単位の取り方をしていれば残っている試験科目はそれほど多くはないとは言え、学生からすれば試験が終わる1月下旬までは参加しづらい時期でもあります。また、国公立大学では後期試験が2月上旬に実施される大学が多く、1月下旬のインターンシップには参加しづらい事情もあります。「1月」よりも「12月」のほうが、参加する学生にとっても、募集する企業にとってもメリットがありそうです。

「早期選考会」というインターンシップルート選考

 次に、インターンシップに参加した企業から、参加後にどんなアプローチがあったのかを見てみましょう[図表10]。「何もない」と回答した学生は文系・理系ともに2割もいません。残りの8割以上の学生は、企業側から何らかのアプローチがあったことになります。

[図表10] インターンシップ参加企業からのアプローチ(複数回答)

 アプローチ内容のトップは「早期選考会の案内」で、文系で49%。理系では57%もの学生が案内を受けています。かつては、「(プレ)エントリー受付開始の案内」が断トツのトップであった時期が長くありましたが、それはインターンシップを採用選考に直接つなげてはならないという経団連の指針に鑑み、企業側がインターンシップ以外の名目で2月までに学生と接触することを自重していたためです。近年では、インターンシップは完全に採用活動の1ステップの位置づけとされ、インターンシップ参加者には3月1日の採用広報解禁を待つことなく、面接等の呼び出しをかけることが半ば当たり前になってきています。逆に言えば、そのためにインターンシップを実施しているわけです。
 もちろん「早期選考会」は必ずしも3月前に実施されるものだけでなく、3月に実施される場合もあるでしょう。ただし、「(プレ)エントリー受付開始の案内」が34~36%にとどまる背景には、インターンシップ参加者には3月1日以降に再度のプレエントリーを求めない企業が大半であることを意味しています。インターンシップルートの学生と、3月1日以降のプレエントリーからスタートする通常ルートの学生という複線型の選考方法を採る企業が増えています。

インターンシップと選考の連携を肯定する学生

 最後に、学生はインターンシップと選考の関係をどう捉えているのかを見てみたいと思います[図表11]。選択肢は、「インターンシップからもっと多く採用選考すべき」「通常の選考以外にインターンシップからの選考もあっていい」「インターンシップを選考とリンクさせるべきではない」の三択です。

[図表11] インターンシップと採用選考の関係

 結果は、文系と理系で大きな差異はなく、おおまかに言うと、「インターンシップからもっと多く採用選考すべき」が2割、「通常の選考以外にインターンシップからの選考もあっていい」が6割、「インターンシップを選考とリンクさせるべきではない」が2割となりました。インターンシップと選考がリンクすることには8割の学生が肯定的に捉えています。経団連に代わって「就活ルール」を主導することになった政府は、2019年3月に「インターンシップは採用の選考と直結しないように」との要請をまとめて経済団体や業界団体に対して送付しましたが、採用する企業側だけでなく、当の学生たちもインターンシップと選考との直結を望んでいるという皮肉な結果となっています。
 インターンシップと採用選考との直結が問題なのではなく、学生に対して、純粋な就業体験にとどまるのか、採用選考を兼ねているのかを明示するとともに、後者の場合にはその内容も明記するルールにしたほうが、両者にとって正しい姿なのではないでしょうか。

寺澤 康介 てらざわ こうすけ
ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長
86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。
http://www.hrpro.co.jp/