労務行政研究所では、日々企業の人事セクションと密接に交流し、人材戦略の立案から法律面のコンプライアンス整備まで、企業活動のさまざまな場面に立ち会う人事コンサルタントを対象にアンケートを実施し、その中の設問で人事担当者であれば必読の書籍と、その理由を挙げてもらった。結果は経営・マネジメント理論を学ぶ1冊から、法律知識、論理的思考法、そして「人間力」を鍛える名著など、企業を支える人事担当者として必須の知識が詰まったラインナップとなっている。今回から4回にわたって、その結果を紹介する。第1回は1~4位まで6冊である。
調査要領
- 1. 調査名 人事コンサルタントに聞く 人事部の課題と解決に関するアンケート
- 2. 調査主体 労務行政研究所 ジンジュール編集部調べ(調査機関:株式会社日経リサーチ)
- 3. 調査対象 労務行政研究所が保有する人事コンサルタントのリスト234人
- 4. 調査期間 2011年2月22日~3月7日
- 5. 調査方法 インターネットリサーチ
- 6. 集計対象:63人
※自由記入欄の()内の意味は、左から人事コンサルタントとしての経験年数、事業会社での人事部門での経験の有無、人事部門での在籍年数は通算何年を表す。
例:(10年、ある、6年)
→人事コンサルタントとしての経験年数:10年
事業会社での人事部門での経験:ある
人事部門での在籍年数は通算何年:6年
1位 |
---|
『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』【19票】 |
(ジェームズ・C.コリンズ著 山岡洋一訳 日経BP社) |
- ● グレート企業の秘訣、自社の経営がどのレベルか、など示唆に富む(20年、ある、1年)
- ● 経営ビジョンを持った企業の取り組みについて触れておくことを勧める。併せて同シリーズ1(『ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則』) も読みたい。(22年、ある、12年)
- ● ビジョンの大切さが理解できる(20年、ある、4年)
- ● 現在の優良企業の条件「適切な人をバスに乗せる」を、10年前に喝破した本であるので(10年、ある、6年)
- ● ビジョナリーカンパニーシリーズは目を通しておきたい。人事にとっては必要な視点(3年、ある、12年)
- ● 経営理念、組織風土が企業経営に及ぼす影響について、基本的な理解ができる(6年、ある、15年)
2位 |
---|
『【エッセンシャル版】マネジメント 基本と原則』【16票】 |
(P・F・ドラッカー著 上田惇生翻訳 ダイヤモンド社) |
- ● 共通言語として。また、ドラッカーの喝破に触れ、目のウロコをたくさん落としておくことが人事担当者には欠かせない(14年、ある、7年)
- ● ドラッカーの「マネジメントの基本」に触れる絶好の書。逃げない真摯さを読み取りたい(22年、ある、12年)
- ● マネジメントの基本が分かる(20年、ある、4年)
- ● 言うまでもなく必読書(10年、ある、6年)
- ● 基本として読むべき(8年、ない)
- ● 時代が変化しても普遍的な概念が整理された内容になっており、理解しやすい(3年、ある、4年)
- ● やはりドラッカーは、いつの時代にも、新しい発見がある(23年、ある、7年)
- ● 経営の原理原則を知ることができる。元祖コンサルタントの箴言(しんげん)には、立場の違いを超えて伝わる普遍性と力強さがある(6年、ある、16年)
- ● 実業界に身を置く者にとっての基礎知識である(6年、ある、15年)
3位 |
---|
『小倉昌男経営学』【15票】 |
(小倉昌男著 日経BP社) |
- ● 小倉社長の福祉に対する経営視点に共感(20年、ある、1年)。
- ● クロネコヤマトが宅急便を定着させていく信念を知ることは、経営に対する姿勢を学ぶうえで有効である(22年、ある、12年)。
- ● 名著。経営に大事なことを感じられる(11年、ない)
- ● 経営者の観点が学べる(6年、ある、11年)
- ● 経営者の思考、行動がリアルに描かれている(4年、ある、11年)
- ● 経営において、組織とリーダーに求められる判断軸の在り方が、実例を基に理解できる(6年、ある、15年)
4位 |
---|
『ロジカル・シンキング』【13票】 |
(照屋華子/岡田恵子著 東洋経済新報社) |
- ● 論理的思考法の基本を身に付けることができる。ただし、フレームワークにこだわらない柔軟性が必要(22年、ある、12年)
- ● MECE(相互に重なりなく、全部集めたら漏れがないこと)等、ロジカル・シンキングの基本となる書物(18年、ある、7年)
- ● 問題分析のためのフレームワークの習得は、人事以外のビジネスにも役立つと思う(6年、ある、16年)
- ● コミュニケーション、分析、企画、すべての仕事のベースとなる(6年、ある、15年)
- ● ロジカル・シンキング関連書籍の嚆矢(こうし)であり、今なおスタンダード(15年、ある、2年)
4位 |
---|
『コトラーのマーケティング・コンセプト』【13票】 |
(フィリップ・コトラー著、大川修二訳、恩蔵直人監修 東洋経済新報社) |
- ● 「顧客」も人。また「社員」は人事の顧客でもある。マーケティングとHRは何かと関連づけて考えるようにするべき(14年、ある、7年)
- ● 新しい施策や制度の浸透には、マーケティング的発想が有効だと考えるから(4年、ある、8年)
- ● マーケティングは経営戦略と一体的のもの。マーケティングというと、単なる市場調査的なイメージを持つ人も多いので、経営戦略に関する書と併せて目を通しておきたい(22年、ある、12年)
- ● 人事もマーケティングくらい理解していないと、人の採用ができない(20年、ある、4年)
- ● 人事担当者はマーケティング発想を身に付けるべきだが、その基本となる本(10年、ある、6年)
- ● コトラーは1冊は読んでおきたい。人事にも大いに応用できる(3年、ある、12年)
- ● 古典といえる1冊だが、人事にも通じる(23年、ある、7年)
- ● ビジネスパーソンとしては必読書(21年、ない)
4位 |
---|
『7つの習慣』【13票】 |
(スティーブン・R.コヴィー著 ジェームス・スキナー 川西茂訳 キングベアー出版) |
- ● 「影響の輪」と「関心の輪」など、人事担当者として基本スタンスを学べる(11年、ある、12年)
- ● 当たり前のことを当たり前に実践することの難しさ、すばらしさに気づかされる(10年、ある、6年)
- ● 読んでいる人が多く、いまや常識だと思う(3年、ある、12年)
- ● プロとして力を発揮するためには、日常の習慣の積み重ねが大切。そのことを再認識させてくれる本(6年、ある、16年)