公開日 2008.12.15 あした葉経営労務研究所
●労働基準法4条は、「女性であることを理由」とした賃金についての差別的取扱いを禁止している。これが「男女同一賃金の原則」と呼ばれるものである。これは、憲法14条で保障する法の下の平等の理念を、法3条の均等待遇の原則と並んで定めたものである。
●労働基準法3条が賃金、労働時間その他の労働条件について差別的取り扱いを禁止したのに対して、性別を理由とした差別的取扱いを禁止した本条において規制しているのは賃金についてのみである。これは、元来、労働基準法においては、時間外労働、休日労働、深夜業、危険有害業務、産前産後の休業等において女性の保護規定を設け、男性と異なる扱いをしていたことに由来する(現在は母性保護規定を存続・拡充させ、女性一般保護規定については撤廃もしくは大幅な緩和がなされている)。
年齢・勤続年数、扶養家族の有無・数、職種・職務内容等の相違に基づく個々の男女間の賃金差異は本原則に抵触しない。
●「女性であることを理由として」とは、女性労働者が、一般的または平均的に能率が悪いこと、勤続年数が短いこと、主たる生計の維持者ではないこと等を理由とすることをいう。
したがって、男女労働者について、職務、能率、技能、年齢、勤続年数等によって賃金に個人的差異が生じても本条違反ではない(昭22.9.13 発基17)。
●「差別的取扱い」には、不利に取り扱う場合のみならず有利に取り扱う場合も含まれる(昭63.3.14 基発150)。
●就業規則に賃金について男女差別の規定があるが、現実に行われておらず、賃金の男女差別待遇の事実がなければ、その規定は無効ではあるが、本条違反とはならない(昭23.12.25 基収4281)。
●男女雇用機会均等法の施行と同時期に導入された、いわゆる「コース別雇用管理制度」(複線型雇用管理制度)における、採用、配置、昇進等の違いによる賃金差異は本条違反とはならないとされている。最近はコース別の職務内容に差がないケースも増えてきており、一般職を廃止し総合職に一本化する企業や、勤務地限定制度として再編成する企業も増えている。
■関連用語
均等待遇の原則
(あした葉経営労務研究所 代表/株式会社キャリア・ブレーン 認定キャリア・コンサルタント 本田和盛)