中小企業は、業績が改善していないにもかかわらず、人材確保を優先する目的で賃金を引き上げる「防衛的な賃上げ」に追い込まれている例が多い。原料費や輸送費などに加え、人件費も製品やサービスの価格に反映させ、サプライチェーン(供給網)全体で負担する取り組みが欠かせない。
中小企業庁によると、企業が稼ぎを人件費に回す割合を示す労働分配率は2023年度、中規模企業が76・9%、小規模企業80・0%だった。大企業は48・2%で賃上げ余力の差は大きく、賃金格差がさらに広がる懸念もある。
経団連は20日公表した経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)で、適正な価格転嫁のさらなる進展に貢献していくと改めて説明した。中小企業の賃上げ促進に向け、大企業も協力する姿勢を強調するためだ。
政府と経済界は、取引適正化を目指す「パートナーシップ構築宣言」を推進。1日には下請けいじめを防ぐ中小受託取引適正化法が施行された。政府が下請法を改正し、発注側の大企業が受注側の中小企業に対し取引価格を一方的に決めることを禁じた。
日本商工会議所が25年6月にまとめた中小企業の賃金改定調査によると、25年度は防衛的な賃上げに当たる「業績の改善が見られないが賃上げを実施(予定を含む)」が60・1%に上った。前向きな賃上げの「業績が好調・改善しているため賃上げを実施」は39・9%。24年度も同じ傾向だった。
九州の小売業者は「中小・零細企業は商品価格にコストの転嫁がしづらく、賃上げは実質、利益を圧迫していて厳しい」と訴えた。東北の運輸業者は「値上げ交渉がもっとスムーズにいくような政府のサポートをお願いしたい」と要望した。
連合の芳野友子会長は今月5日の年頭会見で「企業規模間、雇用形態間の格差是正も大きな課題の一つだ。格差の解消につなげたい」と語った。
(共同通信社)
2026年01月20日 共同通信社