組織心理学者である著者が「向上心」「人間的成長」について説いた本書では、成功の要因が「先天的な才能」ではなく後天的に習得できる能力にあることを、豊富な実例と科学的知見から示しています。「性格スキル」「モチベーションをいかに高めるか」「誰もが輝ける『仕組み』がある」という三つのPartから、人がどのようにして成長し、可能性を開花させるかを論じていきます。
Part1の「性格スキル」は「心の力」で、私たちがより高い目標に達するために不可欠なものであるとし、これをどう伸ばすかを探究します。
Chapter1では、「不快な経験」こそが最高の成長剤であり、「慣れ親しんだスタイル」を手放す勇気を持ち、学びに伴う「居心地の悪さ」を受け入れることで人は成長するとしています。
Chapter2では、人は新たなアイデアを吸収することで成長し、「スポンジ」のように吸収力を高めていくと、より大きな目標を達成する能力が培われるとしています。
Chapter3では、「完璧」でなければならないという幻想を捨て、欠点を受け入れつつ、成長の「最適点」を探ることが肝要で、完璧を目指すより「まず終わらせる」ことを優先すべきであるとしています。
Part2は「モチベーションをいかにして高めるか」をテーマとし、その仕組みの構築に焦点を当てます。
Chapter4では、「単調な課題」に楽しく取り組むコツ、「やる気の維持」と「スキルの向上」の両立法、「非凡な才」を引き出す工夫や人が「急速に進歩する」ときの条件などを説き、「遊び心」が一つのカギになるとしています。
Chapter5では、行き詰まった際に、停滞の壁を飛躍への扉に変えていくにはどうすればよいか、「進歩の実感」が湧かないときの乗り越え方を示し、ブレイクスルーは「小さな成功の積み重ね」で起こるとしています。
Chapter6では、個人の限界をどう乗り越えていくかを説いて、「人に教える」ことで「自分の学び」も深まり、人と「力を合わせる」ことで計り知れない効果が得られて、「他者への励まし」が「自分の自信」になるとしています。
Part3では、すべての人の内なる「可能性」を育むためにはどうすればよいか、成長の機会を増やすための体制、仕組みづくりに重点を置きます。
Chapter7では、教育水準の飛躍的向上を遂げたフィンランドの例から、「ポテンシャル」を最大化する仕組みを取り上げ、人は「遊ぶ」ように学ぶときに最も能力が伸びるとしています。
Chapter8では、「集合知」をいかにして生み出すか、「チーム全体のIQ」を上げていく方法について述べ、「協力」の文化、建設的な話し合い、リーダーの「傾聴力」、心理的安全性などがポイントになるとしています。
Chapter9では、その人の「履歴書」には書かれていない本当の価値をどう見極めるかを説き、「尋問」ではなく「対話」としての面接を推奨し、「真の価値」に光を当てるとしています。
「性格スキル」とは、困難な局面を乗り越える力ということになるかと思います。個人的には、「完璧主義者は性格スキルにとってむしろネガティブに作用する」という本書の主張が、2025年9月16日付の本連載第385回で取り上げたオリバー・バークマンの『不完全主義 限りある人生を上手に過ごす方法』に通じるものがあるように思いました。
Chapterごとに事例仕立てになっており、逆境をはね返して不可能を可能にしたり、自身の才能を開花させたりした人物やチームが登場しますが、その中で、独学で建築家となった元プロボクサーの安藤忠雄氏が取り上げられていることも、関心を引きました。
<本書籍の書評マップ&評価>

※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』(有料版)で2025年12月にご紹介したものです
和田泰明 わだ やすあき
和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士
1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒)
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに)
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格
1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー