2025年12月22日掲載

人事パーソン要チェック! 新刊ホンネ書評 - [317]『マッキンゼー リーダーの教室』

(ダナ・マオール/ハンス=ヴェルナー・カース/カート・ストロヴィンク/ラメシュ・スリニヴァサン 著
久家紀子 監訳 水谷 淳 訳 ダイヤモンド社 2025年9月)

 

 本書は、過去10年、500人以上の世界的CEOが参加してきたマッキンゼーによるリーダーシップの学びの場「バウワー・フォーラム」で得られた知見と、マッキンゼーがコンサルティング業務を通じて学んだことを基に、リーダーが他者を率いるために不可欠な能力とその習得方法を示しています。

 マッキンゼーが考えるリーダーシップは、リーダー自身の心理的・感情的・人間的側面に焦点を当てたものと、チームを率いて組織を構築することの人間的側面に焦点を当てたものの大きく二つに分かれ、それを第Ⅰ部「あなたとともに始まる」、第Ⅱ部「あなたを超えて進む」で構成し、それぞれに含まれる六つの要素を、12章にわたって解説しています。

 第Ⅰ部の第1章は「謙虚さ」です。「自分が一番賢い」と思っているリーダーは必ず失敗するとし、自分がその場で最も賢い人間ではないことを自覚し、「本当に人の話を聞く」ことを説いています。
 第2章は「自信」です。優れたリーダーは、たとえある程度の不安を抱えていても、それを克服して「自分はこの場にふさわしい」と信じることができ、それにより、勇気ある意思決定をすることができると述べます。
 第3章は「無私無欲の心」です。過度な自尊心は有害な振る舞いを引き起こしやすいことから、優れたリーダーは、自尊心を克服する方法を身に付け、そのプロセスを習慣化しているため、自分の力量を証明しようとはしないとしています。
 第4章は「弱さをさらけ出す」です。弱さをさらしたリーダーは人を()きつけ、リーダーが正直であれば部下も心を開くとし、「強さ」と「弱さ」のバランスを取ることの重要性を訴えます。
 第5章は「立ち直る力」です。「失敗」を「学び」と捉えているリーダーは、自分自身に足りないところを正直に認め、悪い状況から立ち直る力と、学んだ教訓を踏まえて前に進む力を兼ね備えているとしています。
 第6章は「柔軟性」です。優れたリーダーは三つの柔軟性、すなわち①意識的に難しい地位に就く、②常に新しいことを学び続ける、③多様な利害関係者と渡り歩く——を持っていると指摘します。

 第Ⅱ部の第7章は「目的意識」です。優れたリーダーは当事者の声に耳を傾け、自身と部下の両方を奮い立たせるような明確な目的を組み立てるとしています。
 第8章は「大胆な一手」です。優れたリーダーは、組織にとってどのような策が最も効果的かを判断し、大胆な一手を打つために仲間を鼓舞し、組織全体に戦略や施策を理解させ、受け入れさせると述べます。
 第9章は「権限委譲」です。優れたリーダーは、自分が管理すると同時に、適切なバランスを持って、部下たちに自主性と間違いを犯す自由を与えると説きます。
 第10章は「真実を語るよう促す」です。誰もが上司に隠し事をしがちであるが、優れたリーダーは、真実を話す人たちから成る非公式のチームをつくり、それを利用することで、部下たちが感じていることを理解するとしています。
 第11章は「失敗を恐れない」です。優れたリーダーは、柔軟性、心の広さ、状況の変化への適応能力が重要であることを理解し、過ちを犯しても学ばないことこそが失敗だとわきまえていると指摘します。
 第12章は「共感」です。「社員のことを第一に考える」ことは易しくないが、「仕事」と「楽しみ」を結びつけると良い影響が生まれるとします。

 本書は、世界的な企業のCEOの実例が豊富に紹介されていますが、実践に生かせる形でリーダーシップの方法論が具体的に示されているため、CEOに限らずあらゆるリーダーに広くお薦めできます。

<本書籍の書評マップ&評価>

※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』(有料版)で2025年9月にご紹介したものです

【本欄 執筆者紹介】
 和田泰明 わだ やすあき

 和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士

1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒)
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに)
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格

1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー