連合は19日、春闘の第三者評価を目的として設置した有識者委員会の報告書を公表した。これまでの春闘で掲げてきた「賃金・経済・物価を安定した巡航軌道に乗せる」との目標について「一定程度は前進している」と評価。今後の春闘では、過去のインフレ実績ではなく将来の見通しを要求基準に反映するよう提言した。
報告書で有識者委は「賃上げの目的は生活水準を維持・改善することで、重要なのは過去の実績ではなく、今後1年間のインフレ率と労働生産性の見通しだ」と指摘。日銀が目標に掲げる「2%程度の物価上昇」を採用するのが望ましいとした。予期せぬ事態で見通しが外れても、次回交渉で補正できる「キャッチアップ条項」の明文化も有効だとした。
「賃金は上がらなくても仕方ない」といった過去の「デフレマインド」と決別し、生活向上が実感できる「未来志向」の要求や交渉スタンスの強化を訴えた。
連合は今春闘で2年連続となる5%台の賃上げを実現した。報告書ではこうした動きを評価した上で、企業規模や地域、年代間などで格差が生じていると指摘。(1)中小企業に、持続的な賃上げを組み込んだ経営計画策定を要請する(2)労働組合がない企業に対し情報発信や相談活動を強化する-といった提言も示した。
連合の芳野友子会長は、報告書公表に伴い東京都内で開かれたシンポジウムで「全ての人が豊かさを実感できる社会の実現に向け、提言をどう生かしていくかが問われている。知恵を絞り出す必要がある」と述べた。
有識者委は、春闘の客観的な評価を受ける連合初の取り組みとして設置。大学教授らで構成され、芳野会長就任後の2022年以降の春闘について検討した。
(共同通信社)
2025年09月19日 共同通信社