三菱重工業長崎造船所(長崎市)で働きじん肺などになったとして、下請け会社の元作業員らが三菱重工に計約5億5千万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は11日、一部原告の請求を退けた一審長崎地裁判決を変更し、死者を含む作業員18人全員の罹患を認め約2億2900万円の賠償を命じた。安全配慮義務違反と因果関係を認定した。
2022年の一審判決は、作業員13人の罹患を認め約1億2千万円の支払いを命じた一方、平成初期以降の義務違反はないと判断。5人の罹患や因果関係を認めず、双方が控訴していた。
松田典浩裁判長は判決理由で「必要な粉じん対策を、労働者らの生命、健康に対する危険性が除去されるまで十分に尽くしていなかった」とし、大型の粉じん対策を講じた09(平成21)年2月までは安全配慮義務に違反していたと指摘。平成初期以降に長く働いた人らの因果関係を認めた。
判決によると、元作業員は1954~2015年、船の建造作業などに携わり、じん肺や合併症の続発性気管支炎、肺がんを発症した。
一審から賠償額が増えた原告の橋口洋一さん(76)は記者会見で「全員救済の素晴らしい結果。闘いの中で亡くなった仲間も喜んでいると思う」と笑みを浮かべた。三菱重工は「判決文を精査し、今後の対応を検討したい」とコメントした。
三菱重工を巡る同種訴訟では今年6月、福岡高裁が下請け会社の元作業員3人についてじん肺と認めず請求を棄却し、原告側が上告している。
(共同通信社)
2025年09月11日 共同通信社