2025年12月08日掲載

人事パーソン要チェック! 新刊ホンネ書評 - [316]『不完全主義 限りある人生を上手に過ごす方法』

(オリバー・バークマン 著 高橋璃子 訳 かんき出版 2025年7月)

 

 本書は、予測不可能性に満ちた現代では、「人生を思いのままにする」という完璧主義は行き詰まるため、そうした幻想を手放して現実を受け入れる「不完全主義」こそが望ましいとし、限りある人生をどう過ごすべきかを、4週間にわたる「心のリトリート(静養)」という形で示したものです。

 第1週では、自分の有限性を受けとめることを説いています。人生はコントロールできないというのが現実で(DAY1)、そんな中、今日何か少しだけ実行するだけで価値があるとしています(DAY2)。何かを「しなくてはならない」ということはなく、結果を引き受けさえすれば、何をしようと自由であり(DAY3)、何もできていないと思い込む「生産性の負債」に打ち勝つには、「やったことリスㇳ」を作るとよいとしています(DAY4)。

 この世に必読書などはなく、本のリストを山でなく川のように扱い、目の前を流れる川からときどき気になるものを拾い上げればよいと(DAY5)。自分の戦うべき戦いを選ぶことが肝要で(DAY6)、考えるべきは目の前の一瞬だけで、未来のことは未来にまかせればよいとしています(DAY7)。

 第2週では、不完全でも果敢に行動を起こすべきだとしています。意思決定は行動に移してこそのそれであり(DAY8)、完璧主義者は新しいことを始めるのが大好きだが、大事なのは始めたことを終わらせることだと(DAY9)。自分の人生が何を要求するか、自身のライフタスクに向き合うべきで(DAY10)、見たくないタスクや問題を「かじるネズミ」に喩えるならば、そのネズミのいる物置小屋に行って問題を直視せよとしています(DAY11)。

 「毎日○○する」といったルールに縛られず、「だいたい毎日」やるルールにしておくのがよく(DAY12)、1つの仕事は3〜4時間で切り上げるのが創造面において効果的で(DAY13)、問題を山登りを楽しむかのように楽しむべきだとしています(DAY14)。

 第3週では、余分な力を抜いて物事の自然な進みを促すことを勧めています。やりたいことができないのは「完璧にやりとげなくては」と思い込むためで、物事を難しく考えるなと(DAY15)。「自分がしてもらいたいように他人に接する」の裏返しで、「他人にしたくないことを自分にしない」こと(DAY16)、善行のハードルを下げたければ、他人への親切は今すぐ行動に移すこと(DAY17)、また、他人の役に立ちたかったら、まず、自分のやるべきことに集中すべきだとも述べています(DAY17)。

 完璧に予測可能な人生はつまらず、「半ばコントロール可能」が望ましく(DAY19)、「内なる品質管理者」をクビにして、質より量にこだわる方が確実なゴールに進めるとし(DAY20)、集中力を高めすぎるのもよくないとしています(DAY21)。

 第4週では、未来のことばかり考えず、今ここにある現実を生きてみることだとしています(DAY22)。ゴールではなく出発点を見ること(DAY23)、欠点のなかに他者とのつながりを見つけることを説き(DAY24)、体験を溜め込んでも意味がないとしています(DAY25)。

 複雑な世界のすべてを把握するのは無理で、把握できない世界を生きればよく(DAY26)、これまで誰かが成し遂げたことのすべては不完全な「ただの人間」がやったことにすぎず(DAY27)、不完全な一歩を果敢に踏み出すことが生きがいへの鍵となるとしています(DAY28)。

 「すべてを思い通りにコントロールしなければならない」という思い込みがあると、かえって行動の質を落とし、継続性を奪うことがあり、だからこそ、完璧主義の呪縛から離れるべきで、「不完全さを抱えたまま前に進む人こそ、人生を味わい尽くせる」ということを教えてくれる本です。複雑系の仕事に携わる人事パーソンにとっては、示唆に富む内容だと思います。

<本書籍の書評マップ&評価>

※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』(有料版)で2025年9月にご紹介したものです

【本欄 執筆者紹介】
 和田泰明 わだ やすあき

 和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士

1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒)
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに)
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格

1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー