最低賃金の大幅引き上げに伴い、「年収106万円の壁」が2025年度中に解消される見通しとなった。パートら短時間労働者が社会保険料負担を避けるため収入を抑える要因になっているとの指摘があった。厚生年金に入る収入要件が事実上なくなり、加入しやすくなる。加入すると将来の年金額が手厚くなる半面、保険料負担で手取りが減るケースもある。
厚生年金の加入には、労働時間が週20時間以上で、月収8万8千円(年収換算で約106万円)以上などの要件を全て満たす必要がある。25年度の最低賃金改定により、週20時間以上働くと全都道府県で月収が8万8千円を超える。改定は来年3月末までに各地で適用される見通しで、収入要件は意味を持たなくなる。
ただ106万円という「壁」が解消しても、保険料負担を避けるため、労働時間を週20時間未満に抑える働き控えが広がる可能性がある。
経済団体関係者によると、時給の高い東京では既に問題が顕在化。日本商工会議所などは今春、政府に要望書を提出し「最低賃金の大幅な引き上げが、中小企業などの人手不足に拍車をかける」と強調。抜本的な制度改正や支援策を求めた。
短時間労働者は現在、労働時間や収入のほか、勤務先の従業員数が51人以上といった要件を満たす場合、厚生年金に加入する。保険料は労使折半で負担し、老後に受け取る年金額は増える。企業規模要件(従業員数51人以上)も段階的に緩和し、最終的に撤廃される。
(共同通信社)
2025年09月05日 共同通信社