2025年11月24日掲載

人事パーソン要チェック! 新刊ホンネ書評 - [315]『Z世代の頭の中』

(牛窪 恵 著 日経プレミアシリーズ 2025年7月)

 

 本書は、「Z世代」の若者1600人以上への大規模調査と55人へのデプス(1対1)インタビューを基に、「仕事と働き方」「政治と起業、地元志向」「恋愛と結婚」「家族と出産」「消費とSNS、友人関係」の各章からZ世代の特徴を分析し、若者とどう歩んでいくべきかを解説した本です。

 第1章では、仕事と働き方について扱っています。若者は「すぐ辞める」のかという問いに関して、Z世代が第一志望に就職が決まった直後に転職サイトを見ていたりするのは、先々の「転職するかも」が現実となった未来に備えて、早くからスキルと心構えを養っておきたいという気持ちからであると説きます。ただし、「3年で3割が辞める」という説については、2000年ごろから25年間そうした傾向が続いており、Z世代に限った話ではないと述べています。

 また、職場環境が良くても辞める「ゆるブラック」とは、居心地が良くても「ゆるい」職場に成長実感が持てないと感じる傾向のことです。Z世代は必ずしも打たれ弱いわけではなく、こうした考えも “自分をアップデートしなければ” という危機感からくるものであって、「この会社じゃ成長できない」と気づいたら辞める、と決めつけるのは早計だとしています。

 今、利用者が増えている「退職代行サービス」については、社内であまり目立ちたがらないような “いい子” ほど利用する傾向があり、Z世代を象徴するワードのように思われていますが、若者の利用が突出して多いわけではないとのことです。

 また、多くの企業が実施している「インターンシップ」について、その功罪を考えるとともに、企業・学生間のマッチング向上を図るために2025年卒の学生から定義が変更されたものの、インターンシップを通して企業の闇を知ってしまうといったことも見られ、課題はまだ多いとしています。

 Z世代は “先が読めないから「手札(スキルや資格)」を増やしたい” と考えており、未来の不安に対し「先回り」と「二刀流」とを備えていて、また、「働く」を優先せず、いざというときに頼れる家族やお金、プライベートを重視するいうのが著者の見立てです。

 第2~5章では、若者は「ニッポン」に興味がないのか、「結婚が面倒」なのか、「親に甘えすぎ」なのか、「お金を使わない」のかといったZ世代の「ナゾ」を、その実態から解き明かしていきます。

 最終の第6章では、「若者と、どう歩んでいくべきか——Z世代と創るニッポンの未来」と題し、二つのキーワードを挙げています。第1のキーワードは「『多様』を『個別』に落とし込む」。上の世代が仕事面で対峙(たいじ)する際には、「多様性の提示」「対話と傾聴」「個別の助言」が有効であると述べます。仕事に関する施策として、多様性の提示では限定正社員制度などフレキシブルな働き方にフォーカスすること、個別の助言では褒めるときは集団の中よりも「1on1」の場で行うことなどを勧めています。

 第2のキーワードは「『古い』を『新しい』に活かす」です。仕事に関する施策としては、昭和のファミリーイベントで一体感を創出すること、令和版「縁故採用」(リファラル採用)、「出戻り」(アルムナイ)を人手不足の打開策にすることなどを訴えています。

 一般に「Z世代」については、メディアによる既存イメージが逆にその実像を見えにくくし、それが上の世代とのギャップを生んでいる可能性も指摘されており、彼ら・彼女らへの直接取材に基づく本書は、Z世代を理解し、接し方を考える上で参考になると思います。

<本書籍の書評マップ&評価>

※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』(有料版)で2025年8月にご紹介したものです

【本欄 執筆者紹介】
 和田泰明 わだ やすあき

 和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士

1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒)
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに)
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格

1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー