政府は6日、経済財政諮問会議を開き、経済財政運営の指針「骨太方針」案を公表した。人口減少が本格化する中でも、デフレ経済から成長型経済に着実に移行するため、物価変動を考慮した実質賃金を継続的に1%程度上昇させる目標を示した。財政健全化は達成時期を事実上後退させた。
成長戦略として掲げる「新しい資本主義実行計画」案も公表し、最低賃金引き上げの鍵を握る中小企業支援のための投資策を盛り込んだ。ともに13日の閣議決定を目指す。
骨太方針案では2020年代に最低賃金を全国平均で時給1500円とする目標の達成に向け「たゆまぬ努力を続ける」と強調した。財政健全化を巡っては、政策的経費を借金に頼らず税収などでどの程度賄えているかを示す基礎的財政収支(プライマリーバランス)について「25~26年度を通じて可能な限り早期の黒字化を目指す」と記載。これまでは黒字化目標を25年度としていた。
諮問会議に出席した石破茂首相は「賃上げこそが成長戦略の要だ」と述べた。
方針案は高騰しているコメ価格に関し「価格を落ち着かせるため、政府備蓄米の流通の円滑化を進める」とした。農業の生産性向上を目指し「水田政策の見直しの具体化」を進め、農地の大区画化などを推進できるよう十分な予算も確保する。
トランプ米政権の高関税政策については「わが国経済を下振れさせるリスク」と明言。国内産業の供給網の多様化など対策に取り組むとした。
足元では、物価上昇に賃金の伸びが追い付かず、実質賃金が減少している。野党などは物価高対策として消費税減税を掲げるが、方針案は「減税より賃上げ」と銘打ち、賃上げにより手取りが増えるようにすべきだとの考えを示した。
石破政権が重視する地方創生では「当面は人口が減少するという事態を正面から受け止める」とした上で、若者や女性の地方からの転出に歯止めをかけるため、特産品の輸出増など地方の稼ぐ力の向上策や、政府機関の地方移転などを訴えた。
社会保障制度を巡っては、現役世代が急減し、高齢者数がピークを迎える40年ごろを見据え、医療・介護体制の一層の効率化を検討する。
(共同通信社)
2025年06月06日 共同通信社