2025年09月08日掲載

人事パーソン要チェック! 新刊ホンネ書評 - [310]『NO RULES(ノー・ルールズ) 世界一「自由」な会社、NETFLIX』

(リード・ヘイスティングス/エリン・メイヤー 著 土方奈美 訳 日経ビジネス人文庫 2025年4月)

 

 世界最大級の動画配信会社NETFLIXは、「自由と責任の企業文化」でも知られています。本書は、同社の「脱ルール」カルチャーを共同創業者兼会長であるリード・ヘイスティングスが紹介したもので、『異文化理解力』(2015年、英治出版)の著者エリン・メイヤーとの共著です。「自由と責任」のカルチャーを醸成するにはどうすればよいのかを、三つの段階、九つのポイントに分けて解説します。

 Section1では、まず「自由と責任」のカルチャーへの第一歩を踏み出すことであると述べます。
 第1章では「最高の職場=最高の同僚」と題し、リーダーの最優先目標は最高の同僚だけで構成される職場環境を整えることで、最高の同僚とはクリエイティビティーと情熱を持った人材だとしています。
 第2章では、前向きな意図を持って本音を語ることを説きます。フィードバックは徹底して与え合うべきで、率直なフィードバックによって優秀な人材は傑出した人材になるとしています。
 第3章では、休暇規程を撤廃し、出張旅費と経費の承認プロセスを廃止することで、社員のコントロールを最小化できるとします。ただし、上司が手本となる振る舞いやコンテキスト(条件)を示すことが重要であるとも述べています。

 Section2では、「自由と責任」のカルチャーへの次の一歩について説明します。
 第4章では、個人における最高水準の報酬を支払うことを説き、その原資が不足するのであれば、それほど優秀でない人材を何人か解雇してでも原資を確保するべきだとしています。
 第5章では、情報はオープンに共有すべきであるとします。良いニュースも悪いニュースもスピード重視で社員に展開し、それにより社員の不安が高まることもあるが、それ以上に信頼感を醸成することができると説きます。
 第6章では、意思決定に関わる承認を一切不要にせよとしています。コントロール(規則)を減らし、重要でリスクが大きい意思決定を下す権限を、職位にかかわらずさまざまな階層に分散させること、そのためにはリーダーが部下に「上司を喜ばせようとするな」という原則を教育すること、意思決定の結果失敗した場合は率直に公表することなどが求められると述べます。

 Section3では、「自由と責任」のカルチャーの強化について掘り下げます。
 第7章では、能力密度を最大限に高めることを説きます。部下は上司に「私が退社を考えていると言ったら、どれぐらい熱心に引き留めますか?」と尋ねるようにし、上司は必死に引き留めようと思わない人材は残してはならないとしています。
 第8章では、率直さを最大限に高めることの重要性を確認します。360度評価は匿名を避け、他人の話をするときは相手に面と向かって言えることしか言わない、フィードバックは25%が肯定的、75%が改善を促すものになるべきで、聞こえがいい褒め言葉は不要だとしています。
 第9章では、コントロールの撤廃を説きます。コントロールではなく、コンテキストでリーダーシップを実践し、部下に意思決定に必要な情報を与え、最終的な判断も部下に委ねよとしています。

 最後のSection4では、率直さに対する考え方が国によって大きく異なることから、グローバル企業への道を歩む際に留意すべき点を挙げています。

 イノベーティブな企業文化を世界規模で築き、高め、維持し続けるための方法論が、経験と実証に基づいて分かりやすく説かれており、組織文化について考える上で示唆に富む本です。とりわけ人材マネジメントについての斬新な考え方が多く見られ、人事パーソンに広くお薦めします。

<本書籍の書評マップ&評価>

※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』(有料版)で2025年5月にご紹介したものです

【本欄 執筆者紹介】
 和田泰明 わだ やすあき

 和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士

1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒)
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに)
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格

1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー