政府は22日、労働団体や経済界の代表者と話し合う政労使会議を官邸で開いた。石破茂首相が出席し、2020年代中に最低賃金を1500円に引き上げる目標の実現に向け、補助金や交付金を活用して各都道府県の引き上げを支援する考えを示した。制度の詳細は今後詰める。中小企業の負担が大きく、達成のハードルの高さが指摘される中、国の関与を強めて引き上げを加速させる。
最低賃金は、厚生労働相の諮問機関「中央最低賃金審議会」が引き上げの目安額を示し、各都道府県の地方審議会が地方経済の動向などを考慮して実際の改定額を決定する。石破氏は、目安額を超える引き上げを行った都道府県を対象とする考えを示した。24年度は27県が目安額を上回った。
石破氏は「賃上げ環境の整備に政策資源を総動員する」と強調した。中小企業が取引先に対して価格転嫁しやすくすることや、生産性向上の支援にも注力する。
24年度の最低賃金は全国平均時給1055円で、29年度に目標を達成するには単純計算で毎年7・3%の伸びが必要となる。25年度の改定の議論は夏に始まる見通しだ。
日本商工会議所の小林健会頭は会議終了後に記者団の取材に応じ、7・3%の引き上げ率を「あまりにも高い」と指摘。経団連の十倉雅和会長は最低賃金が赤字企業にも適用されることに触れ「中小企業や連合の意見もよく聞いて議論してほしい」と述べた。
石破氏は最低賃金をフルタイム労働者の賃金の中央値の60%とする欧州連合(EU)の指標を引き合いに出し「わが国の最低賃金が低い水準となっていることも踏まえ、中央最低賃金審議会において議論いただく」とも語った。連合によると日本の最低賃金は中央値の5割弱にとどまる。
(共同通信社)