政府、賃上げ実質1%目標 中小支援へ5カ年計画 60兆円投資、価格転嫁徹底

 政府は14日、官邸で新しい資本主義実現会議を開き、2029年度までに物価変動を考慮した実質賃金上昇率を日本全体で1%程度に定着させることを新たな目標として掲げた。実現に向けて重視する中小企業の賃上げを支援するため「賃金向上推進5カ年計画」を公表し、官民で60兆円の生産性向上投資や、国や自治体が発注する事業での価格転嫁の徹底に取り組む考えを強調した。
 石破茂首相は会議で「中小企業、小規模事業者の経営変革の後押しと賃上げ環境の整備に政策資源を総動員する」と述べた。今月下旬に労働団体や経済界の代表者と話し合う政労使会議を開き、最低賃金の引き上げ方針について議論することも明らかにした。
 政府、日銀は物価上昇率を前年比2%で安定させる方針。今回の政府目標は名目では物価上昇を上回る3%程度の賃上げとなる。だが実質賃金は長く低迷してきた経緯がある上に、厚生労働省によると3月まで3カ月連続のマイナスとなった。米国の高関税による景気下押しが懸念され、実現は簡単ではなさそうだ。
 今回の計画には、サービス業を中心とした12業種の生産性を引き上げるための省力化投資の促進を盛り込んだ。このうち飲食業では生産性を29年度までに24年度比で35%向上させるとし、ロボットやITツール導入のための補助金活用を掲げた。
 売上高100億円を目指す成長志向の中小企業の投資を後押しすることも示した。
 国や自治体が地方の中小企業に道路整備を発注したり、物品を注文したりする際に、賃上げの原資を確保できるようにすることが重要だとも指摘し、過度な価格競争を抑制する制度の導入徹底を求めた。
(共同通信社)