高齢者労災防止、努力義務 個人事業主、保護対象に 改正安衛法が成立

 働く高齢者の労災防止に向けた作業環境改善を努力義務とする改正労働安全衛生法が8日、衆院本会議で、賛成多数で可決、成立した。厚生労働省が2026年4月の施行までに指針を策定する。同法の保護対象として個人事業主(フリーランス)を位置付けることや、心理的負荷を調べる「ストレスチェック」の全事業所への義務化拡大も柱だ。
 厚労省によると、雇用者全体における60歳以上の割合は23年に18・7%だったが、休業4日以上の労災に遭った60歳以上の割合は29・3%に上った。加齢による身体機能の低下が原因とみられ、転落や転倒の事故が多く、休業見込み期間も長引く傾向がある。
 厚労省は20年に高齢者の労災防止に向けたガイドラインを公表。身体機能低下を補う設備導入や特性に配慮した作業管理に関する内容だが、現場での取り組みは低調だ。同省は改正法に基づく指針を策定し、努力義務化により環境改善を促す。
 個人事業主の保護は、主に「一人親方」のように、雇用された労働者と同じ現場で働いているのに、これまで同法対象外だった人を念頭に置く。21年の建設アスベスト訴訟最高裁判決の判断に沿った改正となる。
 ストレスチェックは現在、従業員50人以上の事業所に年1回の実施を義務付けている。精神障害の労災認定件数の増加を受け、改正により全事業所を対象とする。施行は公布から3年以内としている。
(共同通信社)