日銀が早ければ2027年にも企業の賃上げ動向の独自調査に乗り出すことが6日分かった。これまで労働組合の集計などを活用してきたが、多くを占める労組のない中小企業の賃金状況を十分把握できていないため、日銀自らが幅広く実態を調べて政策金利の上げ下げなどの判断に用いる。四半期ごとに実施する「企業短期経済観測調査(短観)」の項目に追加する考えで、25年度後半にも見直し方針を公表する。
日銀は物価上昇率を前年比2%程度で安定させる目標を掲げており、実現には個人消費の底上げにつながる賃金上昇の持続が欠かせないとみる。賃金と物価がそろって上がる好循環が実現できているかどうかを詳しいデータで確認し、適切な金融政策運営につなげる。
日銀は労組を束ねる中央組織である連合が集計した賃上げ率などを現時点では参考にしている。ただ労組に加入する労働者は少なく、厚生労働省によれば雇用者数に占める組合員数の推定割合は24年時点で16・1%にとどまる。労組のない中小企業で賃上げが進まないとの指摘もある。
日銀は賃金動向を詳細に調べていなかったが、企業の賃上げが特にこの数年間で重視されるようになり、より正確な把握が必要だと判断した。一部の企業を対象に賃上げ率の実績や見通しの予備調査を既に始めており、質問内容やタイミングなどを検証している。短観見直し方針の公表後、外部からも広く意見を募り、調査内容を固める。その後、システムを改修し実施する計画だ。
短観は全国約9千社の企業経営者を対象とした調査だ。景気の先行きに対する見方や設備投資計画などをアンケート方式で尋ねる。実施から発表までの期間が短く、主な質問の回答率が100%に近いことから、最新の景気動向を示す経済指標として注目度が高い。日銀は政策を決める際の重要な判断材料としている。
(共同通信社)