上田清司参院議員の公設秘書(故人)から取材中に性暴力を受けたとして、記者だった女性が、国を相手取り1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は24日、440万円の賠償を命じた。中村心裁判長は性暴力が「秘書の職務に付随して行われた」と判断した。
判決によると、秘書は2020年3月24日、医療関係者らとの会合後に、タクシー内や路上で無理やりキスするなどしたほか、27日には政党の動向に関する情報を提供すると呼び出して飲食店で会食した後、飲酒の影響で抵抗できない状態にし、ホテルで性行為に及んだ。
中村裁判長は、公設秘書の業務は広範で、報道関係者への対応や会食出席も職務に含まれると指摘。その上で、会合や会食と性的暴行に「時間的・場所的な密接性がある」とし「公設秘書としての職務執行の外形を備える行為だ」と判断した。上田議員が秘書を指揮監督する義務があったとの女性側の主張は退けた。
判決を受け、女性は「被害から5年たっても涙が止まらず眠れなくなる日がある。社会から性暴力をなくすため、多くの人に『自分ごと』として理解してほしい」とのコメントを出した。
秘書は20年8月に準強制性交などの疑いで埼玉県警に書類送検され、数日後に自殺。女性は心的外傷後ストレス障害(PTSD)の診断を受け、記者職を離れた。
東京都内で記者会見した女性の代理人の角田由紀子弁護士は「裁判所がこうした判決を書ける背景には、性暴力への理解の深まりがある」とした上で、女性記者への性被害を埋没させないことの重要性を訴えた。
(共同通信社)