退職手当不支給は妥当 最高裁、千円着服の運転手

 運賃千円を着服したとして懲戒免職になった京都市営バスの元運転手の男性が、約1200万円の退職手当を全額不支給とした市の処分が重過ぎるとして取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(堺徹裁判長)は17日、全額不支給は妥当との判断を示した。裁判官5人全員一致の結論。男性敗訴が確定した。
 第1小法廷は「公務の遂行中に公金を着服したという重大な非違行為で、バス事業に対する信頼を大きく損なった」と指摘。被害額が千円で弁償していることなどを考慮しても、市の判断は「裁量権の範囲を逸脱するとは言えない」とした。
 2023年7月の一審京都地裁判決は「市の判断は不合理とは言えない」として請求を退けたが、24年2月の二審大阪高裁判決は退職手当を「給与の後払い的な性格や生活保障的な側面も軽視できない」とした上で「行為の程度や内容に比べて酷だ」と判断し、市の処分を取り消した。
 判決によると、男性は1993年から運転手をしていた。2022年2月、乗客5人分の運賃として1150円を受け取り、うち千円札をカバンに入れ着服した。市が後日、ドライブレコーダーで業務状況を点検した際に発覚した。
(共同通信社)