厚生労働省は16日、今国会への提出を目指す年金制度改革法案から、基礎年金(国民年金)を底上げする案を削除する方針を固めた。会社員らが入る厚生年金の積立金活用が夏の参院選で争点化する可能性があり、自民党内の懸念や反発を踏まえて見送る。17日の自民会合で示す。法案にはパートらの厚生年金加入拡大に伴う企業の保険料負担増なども含む。底上げ案を削除しても、自民には法案提出自体の参院選後への先送り論が根強く、意見の集約につながるかどうかは見通せない。
複数の関係者が明らかにした。
全ての国民が受け取る基礎年金の底上げは、給付水準を改善するため、財政が堅調な厚生年金の積立金を活用。厚労省は国民年金だけに加入する人や、就職氷河期世代などが低年金に陥らないようにする対策の一環として改革の柱に位置付けてきた。
だが積立金の活用に伴い厚生年金の受給額が一時的に減るため、与野党から懸念や批判が出ている。自民の一部で「厚生年金からの流用だ」との批判も強く、厚労省は理解を得られないと判断した。
底上げは今回の法案に規定しないものの、将来の底上げ実施を念頭に、積立金の活用に向けた措置を取る。具体的には、厚生年金の受給額の伸びを抑制する「マクロ経済スライド」の実施期間を当初の想定より2年延長し、2030年度まで続ける。
一方、国民年金保険料の納付期間を現行の「60歳になるまでの40年」から5年間延長することを検討する規定を法案に盛り込む方向だ。
自民幹部は15日、法案提出の是非に関する3度目の協議をしたが結論は出ず、党厚労部会などで議論することを確認した。
(共同通信社)