政府が閣議決定し今国会に提出された公益通報者保護法改正案で、刑事罰の対象とする通報者への不利益行為を「解雇と懲戒」と限定したことに対し、立憲民主党が「不当な配置転換」を含めた修正案をまとめる方針であることが11日、関係者への取材で分かった。政府案では抑止力などの点から不十分としている。
刑事罰の対象を限定することには、専門家や告発経験者からも、配置転換を抜け穴とした実質的な報復がされてしまうとの懸念が示されていた。地方自治体や企業で内部通報者への対応を巡る問題が相次ぐ中、今国会での議論が注目される。
制度改正は消費者庁が設置した有識者検討会で昨年、兵庫県や鹿児島県警での内部通報を巡る問題も念頭に議論。保護の実効性を向上させるため、報復行為に刑事罰を導入する方針が示された。
これを受け政府は3月に改正案を閣議決定し、事業者側が通報を理由として告発者を解雇、懲戒処分にした場合、関与した個人に6月以下の拘禁刑か30万円以下の罰金、法人にも3千万円以下の罰金を科すとしていた。
配置転換は「企業の人事政策を過度に制約する」などと慎重な意見があり除かれた。ただ導入すべきだとの意見は根強く、検討会でも「解雇の代わりにハラスメントで退職に追い込む場合もある」などの発言があった。
日弁連は過去の相談集計から、通報者の受けた不利益取り扱いの内容では配置転換が上位にあるとのデータを提示。通報経験のある当事者からも、政府案では不十分だとの声が上がっている。
立民の修正案は不当な配置転換を罰則対象とするほか、通報者が配置転換を不服として民事裁判を起こした際、事業者側が「通報が理由ではない」と主張するのであればその立証責任を負わせる。
(共同通信社)