2025年06月09日掲載

人事パーソン要チェック! 新刊ホンネ書評 - [304]『EQ2.0——「感情的知性」を高める66のテクニック』

(トラヴィス・ブラッドベリー/ジーン・グリーブス 著、関 美和 訳 フォレスト出版 2025年1月)

 

 本書の訳者あとがきにもあるように、EQという概念は広く一般に知られる一方で、その意味を本当に理解し、仕事や私生活で活用できている人は少ないとのことです。本書は、EQの核となるスキルを説明し、そのスキルを伸ばすにはどうすればよいかを解説したもので、自分自身のEQを測定し、実践的に学び、感情を味方につける方法を説明しています(原著は2009年刊行。初めの翻訳本は2019年刊行で、今回は再版になります)。

 EQに関しては、ダニエル・ゴールマンの『EQ こころの知能指数』(講談社、1998年)が有名ですが、本書ではそのゴールマンの考えに沿って〈個人的なスキル〉と〈社会的なスキル〉があるとし、さらに、個人的なスキルには①自己認識力と②自己管理力が、社会的なスキルには③社会的認識力と④人間関係管理力があるとしています。その上で、EQの土台となる①~④の四つのスキルを伸ばすためのテクニックを、それぞれ15~17項目挙げて解説しています(このテクニック部分は著者らのオリジナルです)。

 例えば、①の自己認識力を高めるためのテクニックとしては「居心地の悪さに慣れる」「悪い気分にもいい気分にも左右されない」、②の自己管理力を高めるためには「目標を公開する」「笑顔や笑い声を増やす」などが挙げられます。③の社会的認識力では「挨拶する時に相手の名前を呼ぶ」「ミーティングメモを取らない」、④の人間関係管理力では「心を開いて好奇心を持つ」「ちょっとした思いやりを示す言葉を使う」といったテクニックを示してます。

 また、本書の特徴として、所定のサイトにアクセスし、巻末の袋とじに記載されているパスコードを入力すると、EQオンラインテストを受けることができます。テストの結果から自分のEQスコアと四つのコアスキルのスコアの内訳が分かるようになっており、これを参考に伸ばしたいスキルを選び、そのためのテクニックを三つ選んで訓練することで、EQが劇的に上がるとしています。

 このテストを受けると、自分のEQの改善すべきところが表示されます。例えば、ある回答結果からは、社会的認識の開発から始めるのがよいとされ、改善の方法は「他人の気持ちに気を配らない→相手の立場に立って考える、他人の意見に耳を貸さない→全体像を探る、社会から遠ざかる→相手の名前を言って挨拶する」といったものになり、そうした内容が本書のどのページに書かれているか示されているため、該当部分を重点的に読めばよいということになります。

 混迷を深める今の時代、EQを高めることはこれまでになく必要とされているのかもしれません。そのことを強く意識している人にはお薦めです。ただし、自己啓発的要素の強い分、読む人によって合う・合わないがあるかもしれません。テストについても、受け止め方次第ですが、個人的には質問・分析結果ともにそれほど精緻ではなく、ややざっくりしたものであるように感じられました。

 最近ではこうしたEQテストやそれを伸ばすトレーニング、EQを生かしたコーチングなどが盛んです。EQを構成するスキルは抽象的な言葉で表されることが多く、そのことがEQに対して漠たるイメージしか持ち得ない原因にもなっているように思いますが、より具体的なものとして理解する上では、その一助となる本です。もちろん、人事パーソンが自身のEQを高めるために読んでもよいと思います。

<本書籍の書評マップ&評価>

※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』(有料版)で2025年2月にご紹介したものです

【本欄 執筆者紹介】
 和田泰明 わだ やすあき

 和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士

1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒)
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに)
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格

1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー