賃上げした企業の法人税を減税する「賃上げ税制」で、2023年度の減税額が前年度に比べ約4割増の7278億円と大幅に増え、制度導入以来最大となったことが29日、財務省のまとめで分かった。賃上げを後押しした一方で、巨額の減税額に見合った効果が出たかどうかの検証が課題となる。
賃上げ税制は13年度に導入。減税額は21年度が2430億円、22年度は5150億円と年々増加している。物価高や企業の業績回復で賃上げが拡大したことが要因。22年度に制度を拡充したことも金額を押し上げた。
23年度は約25万4千件に適用された。業種別では、サービス業が約8万2千件で最多。建設業が約4万9千件、製造業が約3万4千件で続いた。
財務省は毎年、法人税に関する減税などの税制措置の適用額を調べており、通常国会に提出している。今国会は2月上旬の見込み。
賃上げ税制を巡っては、会計検査院が今月、従業員のリスキリング(学び直し)など教育訓練費を増やせば税控除額が広がる制度に関し、多数の企業が訓練費の増額分を上回る税控除を受けていたと公表。「適切ではない恐れがある」と指摘していた。
政府は賃上げ税制全般に関し、今回の集計を踏まえて、効果を検証する。
連合がまとめた23年春闘の傘下労働組合の賃上げ要求に対する企業側回答の最終集計によると、平均賃上げ率は3・58%となり、29年ぶりに3%台を達成していた。
(共同通信社)