2025年05月05日掲載

人事パーソン要チェック! 新刊ホンネ書評 - [302]『組織論の名著30』

(高尾義明 著 ちくま新書 2024年12月)

 

 ちくま新書の「名著30」シリーズの1冊で、今回は「組織論」です。古典から近年刊行のものまで国内外の組織論の名著を幅広く取り上げた読書ガイドになっています。

 第1章では、C.I.バーナード『経営者の役割』など、現在の組織論の礎を築いた古典を4冊取り上げています。ハーバート・A.サイモン『経営行動』、ジェームズ・G.マーチ、ハーバート・A.サイモン『オーガニゼーションズ』ともに、個人的にはかつて読んで難解過ぎて途中で挫折したのですが、当時の翻訳にも問題があったようであるとのこと。『経営行動』は新版が昨年、『オーガニゼーションズ』は第2版が10年前に刊行されており、以前よりは読みやすくなっていますが、これら難解本の読み方も指南してくれています。

 第2章では、官僚制の組織モデルを示したマックス・ウェーバー『支配について』など、現代(近代)の組織がいかに形成されてきたのかを、4冊の著作の紹介を通じて検討していきます。フレデリック・W.テイラー『科学的管理法』はマネジメントの古典で、現代では “人間の自主性を否定し、人を機械のように扱った” などと批判されたりもしますが、実は時代を問わずマネジメントのベースになっている面もあるとのこと。こちらも15年前に新訳が出されて読みやすくなっています。

 第3章では、沼上 幹『組織デザイン』をはじめ、組織を合理的に作り上げるための知見に関わる著作を4冊取り上げています。『組織デザイン』は日経文庫の一冊であり、この章では “マトリクス組織と何か” といった基本的なことが解説されている、こうした入門書を取り上げている一方で、トンプソンの『行為する組織』といった堅めの本も取り上げているのが親切です。

 第4章では、組織の創発的な側面に光を当てる著作を5冊紹介しています。F.J.レスリスバーガー『経営と勤労意欲』、P.セルズニック『組織とリーダーシップ』など入手は簡単でないと思いますが、例えばあの有名なホーソン研究(ホーソン工場の実験)がレスリスバーガーの本にどう書かれているかを、本書でかいつまんで知れるのはありがたいです。また、「神話としてのホーソン研究」という言い方で、ホーソン研究に対する批判的研究も紹介しています。

 第5章では、ミクロ的な視点から組織にアプローチする6冊を取り上げています。フレデリック・ハーズバーグ『仕事と人間性』(ここでも動機づけ・衛生要因に対する批判的研究を併せて紹介しています)、ヘンリー・ミンツバーグ『マネジャーの仕事』、ジョセフ・L.バダラッコ『静かなリーダーシップ』、ロザベス・モス・カンター『企業のなかの男と女』など、人事パーソンであれば押さえておきたい著作が並びます。

 第6・7章は応用編で、第6章では、現実への適用という観点から戸部良一ほか『失敗の研究』など日本の研究者のものを3冊、最終第7章では、組織変革とイノベーションという観点からピーター・M・センゲ『学習する組織』、クレイトン・クリステンセン『イノベーションのジレンマ』(これがなぜ組織論の本なのか、その理由についても触れられています)、さらにはチャールズ・A.オライリー、マイケル・L.タッシュマン『両利きの経営』といった近年の著作まで取り上げています。

 第7章ではさらに、1995年に英語で発表された野中郁次郎、竹内弘高『知識創造企業』も取り上げていますが、野中氏は第6章で取り上げられている『失敗の研究』の共著者の1人でもあります。残念ながら今月(2025年1月)25日に逝去されましたが、亡くなられたのを機に読んでみる、読み直してみる、という著作との接し方もあっていいかと思います。とにかく、“どこからでもいいから読んでみる” ことに尽きます。

<本書籍の書評マップ&評価>

※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』(有料版)で2025年1月にご紹介したものです

【本欄 執筆者紹介】
 和田泰明 わだ やすあき

 和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士

1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒)
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに)
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格

1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー