年金底上げ29年以降判断 先送り、経済情勢見極め 厚労省、慎重論に配慮

 厚生労働省は、全ての国民が受け取る基礎年金(国民年金)を底上げする改革を実施するかどうかの判断を2029年以降に先送りする調整に入った。底上げは厚生年金の積立金を活用して、給付水準を改善する。ただ厚生年金加入者や企業には反発の声があり、国庫(税)負担も兆円単位で新たに必要となる。政府内には慎重論があり、今後の経済情勢を見極めることにした。少数与党の政権運営という事情にも配慮した。関係者が16日、明らかにした。
 厚労省は年金制度改革の関連法案を通常国会に提出する考え。底上げを可能とする規定を盛り込む一方、実施の判断は先送りする。29年には公的年金財政の健全性を5年に1度点検する「財政検証」を行う予定で、29年の検証結果や経済情勢などを踏まえて決める。
 底上げは、基礎年金だけに入る自営業者らが老後に受け取る年金の水準低下を防ぐ狙い。年金には財政が安定するまで給付水準を抑制する仕組みがあり、財政状況が厳しい基礎年金は抑制が長引く。これに対し会社員らが入る厚生年金の財政は堅調なため、厚生年金の積立金を基礎年金の給付に振り向け、抑制期間を短縮して給付水準の底上げを図る。
 厚労省が昨年12月にまとめた年金制度改革の報告書では、底上げの改革は経済や雇用の停滞が続くことを条件に行うと位置付けていた。
 一方、基礎年金の財源の半分は税金で賄われる。底上げした場合は最大で年2兆6千億円の財源が必要とされ「増税論につながる」と警戒する声が政府内から上がっている。
(共同通信社)