基礎年金底上げ法案提出へ 「経済停滞」条件に 厚労省、報告書

 厚生労働省は24日、年金制度改革の報告書をまとめた。厚労相の諮問機関である社会保障審議会の部会に示し大筋で了承を得た。厚生年金の積立金を使って全ての国民が受け取る基礎年金(国民年金)を底上げする改革は、経済や雇用の停滞が続くことを条件に行うと位置付けた。年金財政が悪化し、年金の給付水準が著しく低下するのを避けるためだ。詳細な条件は今後検討する。与党と調整し、来年の通常国会への法案提出を目指す。
 報告書には、会社員に扶養されるパートらが厚生年金に入る年収要件(106万円以上)を撤廃する方針も盛り込んだ。働き控えを招く「106万円の壁」とされてきた。加入者を増やして老後の給付を手厚くする。
 底上げは、基礎年金だけに入る自営業者らが老後に低年金となるのを防ぐ狙いがある一方、財源の半分を賄う国庫負担が兆円単位で必要になる。
 年金には財政が安定するまで給付水準を抑制する「マクロ経済スライド」という仕組みがある。厚労省は今夏、複数の経済パターンで年金財政を検証。過去30年と同程度の経済状況が続く標準ケースでは、現役世代の手取りに対する夫婦の厚生年金(基礎年金を含む)の給付水準は、2024年度の61・2%から57年度の50・4%に低下。底上げすると36年度に56・2%で下げ止まる。
 経済が好調なケースでは、改革しなくても給付水準は57・6%を維持し、底上げの必要性は乏しくなる。実施条件などは部会では決めなかった。
 短時間労働者の厚生年金加入では、勤務先の従業員数を定めた企業規模要件もなくす。週の労働時間が20時間以上ならば加入する。保険料負担の一部を企業が肩代わりできる仕組みも検討する。
 働いて一定の収入がある高齢者の厚生年金を減らす「在職老齢年金」は、適用する基準額(賃金と年金の合計)を現在の月50万円から引き上げ、高齢者の就労を促す。同時に、高所得の会社員が払う厚生年金保険料の上限を引き上げる。
(共同通信社)