年金底上げ、実施に条件 「経済停滞」政府検討 給付水準低下を回避

 政府が、厚生年金の積立金を活用して全ての国民が受け取る基礎年金(国民年金)を底上げする改革案で「経済が停滞すれば実施」といった条件を設ける案を検討していることが分かった。関係者が18日、明らかにした。経済停滞で雇用情勢が冷え込むなどして年金財政が悪化し、給付水準が著しく低下するのを避けるため。経済成長が順調なら給付水準は高く保たれることから、底上げの必要性は乏しいと判断したとみられる。
 底上げは基礎年金だけに加入する自営業者らが低年金に陥るのを防ぐ半面、基礎年金の財源の半分は国庫で賄っているため兆円単位の財源確保が必要となる。政府は、来年の通常国会への提出を目指す制度改革の関連法案に条件を盛り込む方向で調整する。
 自民党は18日の年金委員会などの会合で、底上げは経済停滞時とするよう求める提言をまとめた。小林鷹之事務局長は「具体的な制度設計は厚生労働省に行ってもらう」と述べた。
 両年金はそれぞれ財政が安定するまで「マクロ経済スライド」という仕組みで給付水準を抑制している。抑制は、厚生年金が2026年度に終了するのに対し、基礎年金は57年度まで続くため、基礎年金の水準低下が激しい。
 厚労省は今年7月、経済状況に応じた複数のパターンで年金財政を検証した。給付水準は「現役世代の手取り収入と比べた厚生年金(基礎年金を含む)額の割合」で示し、24年度は61・2%だった。過去30年と同程度の経済状況が続く標準ケースでは、現行のままだと給付水準が57年度に50・4%で下げ止まる。
 基礎年金を底上げした場合、抑制の終了時期が両年金とも36年度となり、給付水準は56・2%に上がる。基礎年金部分の水準も改善される。
 一方、経済が好調なケースでは現行のままでも給付水準は57・6%と高い水準で下げ止まる。基礎年金部分の水準も一定程度確保される。
(共同通信社)