政府、与党は29日、同じ会社に長く勤めるほど退職金への課税が優遇される現行制度の見直しを、2025年度税制改正では見送る方針を固めた。国民民主党との協議で焦点となっている「年収の壁」問題を優先する。退職金課税を巡っては、昨年に「サラリーマン増税」だと批判されて「炎上」し、早々に制度改正を断念。今年、見直し論議を再始動していた。
自民党の宮沢洋一税制調査会長は今月15日に退職金課税の「(改正に向けた)議論をしていくことになる」と述べた。だが、12月中の策定を目指す25年度税制改正大綱までの時間が限られる中、反発を懸念し、見直しは困難との判断に傾いた。
退職金への課税は現在、勤続20年を超えると所得計算時に控除できる額が年40万円から70万円に増える。差し引いた額に2分の1をかけ、所得に応じた税率をかけた金額が納税額となるため、同じ会社に長年勤務した人が有利になる。
働き方が変化する中で不公平とならないよう、政府税制調査会などは見直しを求めてきた。
退職後の生活資金の関係では、厚生労働省が今夏、年金の長期的な給付水準を点検する「財政検証」の結果を公表。検証は5年に1回で、与党税調はこうした結果も踏まえて課税の在り方を見直し、25年度税制改正に反映させる考えだった。税調関係者は取材に「来年でも(見直しは)できる」との見方を示した。
(共同通信社)