厚生労働省は、会社員に扶養されるパートら短時間労働者が厚生年金に加入する年収要件(106万円以上)を撤廃する方向で最終調整に入った。勤務先の従業員数を51人以上とする企業規模の要件もなくす。週の労働時間が20時間以上あれば、年収を問わず加入することになる。老後の給付を手厚くする狙いだが、保険料負担が生じる。厚生年金の年収要件は「106万円の壁」と呼ばれ、保険料負担を避けるため働く時間を抑制する要因ともされてきた。関係者が7日明らかにした。
一方、政府、与党は国民民主党の主張を踏まえ、年収が103万円を超えると所得税が発生する「年収の壁」を見直し、非課税枠の引き上げを検討中。これに対し厚生年金の年収要件をなくせば、手取り収入が減ることになり、曲折も予想される。
最低賃金の引き上げに伴い、週20時間以上の労働時間があれば年収106万円を上回る地域が増えており、厚労省は実態に合わせて撤廃すべきだと判断した。来年の通常国会に関連法案提出を目指す。要件の見直し全体で新たに200万人が加入する見通し。
短時間労働者は、四つの要件を全て満たすと厚生年金に加入する。うち年収と企業規模の要件をなくした上で、「週の労働時間が20時間以上」「学生ではない」との要件は維持する。
保険料は労使で折半している。労働者側の新たな保険料負担を企業が一定程度、肩代わりする仕組みを検討する。企業の負担増に反発も想定され、支援策を用意する。
法案では、従業員5人以上の個人事業所の厚生年金加入も広げる。個人事業所で働く人は現在、製造業や建設業など17業種に限って厚生年金に加入している。これを飲食業や宿泊業、理美容業など全ての業種に拡大する。5人未満の個人事業所は検討課題とする。
(共同通信社)