政府、与党は、国民民主党の主張を踏まえ、年収が103万円を超えると所得税が発生する「年収の壁」について見直す方向で調整に入った。月内に取りまとめる経済対策に検討方針を明記する。複数の関係者が6日、明らかにした。国民は非課税枠を178万円へ引き上げるよう求めているが、政府、与党内には税収減への懸念から慎重論も根強い。8日に始める自民、国民両党の政策協議では、引き上げ幅が焦点となる見通しだ。
国民の玉木雄一郎代表は、最低賃金の上昇率に合わせて非課税枠を引き上げるべきだと主張。1995年から最低賃金が1・73倍上昇したのを踏まえ、178万円への引き上げを要求している。ただ、「1ミリでも変えたら駄目という気はない」として、交渉の余地を残している。
自民幹部は「少数与党なので、政権運営のため国民の主張に応じざるを得ない」と述べた。政府関係者は「経済対策で非課税枠の引き上げに関する前向きな表現が入ることになる」と語った。
政府、与党内では、最低賃金ではなく物価上昇率に基づき引き上げ幅を算出する案も取り沙汰されている。高所得者ほど恩恵が大きくなるとの指摘もあるため、対象世帯を絞るべきだとの意見もある。
自民党税制調査会は6日、非公式の幹部会合を党本部で開き、国民の主張に関し財務省から聞き取った。出席者からは引き上げ幅への異論や税収減への懸念が出た。政府の試算では、国と地方の1年間の税収が計約7兆6千億円減る。宮沢洋一会長は会合後、記者団に「予断を持たずに検討しなければならない」と述べるにとどめた。
林芳正官房長官は記者会見で「個別政策の取り扱いは政党間で議論されるべき事柄だ」とした。
国民は6日の党会合で、自民との政策協議で申し入れる内容を話し合った。非課税枠の引き上げとは別に、年収が103万円を超えた学生でも、親の扶養に入るのを特別に認める暫定的な支援措置を求める意見が上がった。実現すれば親の負担軽減につながる。国民は8日に公明党とも協議を行う。
(共同通信社)