2025年の春闘で、賃上げなどの交渉を巡って経営側の指針となる経団連の「経営労働政策特別委員会(経労委)報告」の原案が5日、判明した。23、24年に実現した大幅な賃上げの「定着」が企業の責務だと強調。そのためには働く人の約7割を雇用する中小企業と、非正規社員の給料アップが鍵を握ると呼びかけた。長引く物価高の中、人件費や原材料費の上昇分を上乗せする価格転嫁の動きを浸透させられるかどうか、企業の姿勢が問われそうだ。
経労委報告は来年1月に正式決定し、公表。2月ごろ本格化する春闘での労働組合との話し合いで、基本給を底上げするベースアップ(ベア)などを決める際の基本的な考え方となる。
報告原案は、企業が賃上げを「コスト増」と捉えず、社員の意欲を高め「イノベーションを創出し、生産性を改善・向上するために不可欠な投資」と認識することが必要だと訴えた。
一方、中小についてはこの2年間で、業績の改善がないのに離職などを防ぐため賃上げを実施したケースが一定数あったことを指摘。今後の中小の賃上げは「適正な価格転嫁と販売価格アップを発注企業側や消費者が受け入れることにかかっている」と強調した。
非正規雇用に関しては、雇用者全体の4割弱を占めており、賃上げだけでなく休暇や諸手当など正社員と同等の待遇改善も求められるとした。
経団連の調査では、24年春闘の大企業の平均賃上げ率は5・58%と歴史的な高水準だった。これに対し、日本商工会議所によると中小は3・62%にとどまり格差が大きかった。労働組合の中央組織である連合は25年春闘で賃上げ要求を「5%以上」とする方針。中小は「6%以上」とし、格差是正を図る構えだ。石破政権の経済界への働きかけも注目される。
(共同通信社)