有期雇用契約が通算5年を超えたのに、無期契約に転換されず雇い止めをされたとして、羽衣国際大(堺市)の元講師の女性が運営する学校法人に地位確認を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(岡正晶裁判長)は31日、無期転換を認めなかった大学側の対応を是認する判断をした。女性側の訴えを認めた二審大阪高裁判決を破棄し、審理を差し戻した。
大学教員の無期転換を巡り最高裁が判断するのは初めてで、裁判官4人全員一致の意見。
労働契約法は有期雇用契約が通算5年を超えた場合、労働者が希望すれば無期雇用への転換を申請できると規定。一方で大学教員の任期を定めた任期法では「多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職」は特例で10年とされ、女性の職がこれに該当するかどうかが争点だった。
第1小法廷は、教員の雇用については大学の実情を踏まえた判断を尊重するとし、「10年特例」の適用に際して職務内容をことさら厳格に解釈するのは相当でないと指摘。その上で、介護福祉士の養成などを担当していた女性は実務経験による実践的な教育研究をしていると判断し、適用されるとした。
女性は判決後、「多くの大学教員が不安定な雇用状態にある。落ち着いて研究できる環境にしなければならない」と話した。
2022年の一審大阪地裁判決は、任期法の適用を認め女性側の請求を棄却したが、昨年の二審判決は女性の職務内容などから「教育研究の職に該当しない」として適用を否定した。
判決によると、女性は13年4月から介護福祉士を養成するコースの専任教員となり、18年11月に無期雇用を申し入れたが、19年3月に雇い止めになった。
(共同通信社)