経団連が発表した上場企業の女性役員比率は増加傾向を示したものの、東京証券取引所の最上位プライム市場で20%に達していない。政府が2030年に目指す30%とは隔たりがあり、経済界の男女間格差は鮮明だ。近年では成長資金を投じる機関投資家も企業に是正を求めるなど視線は厳しい。
女性役員が増えると、議論の活発化によりガバナンス(企業統治)の改善などの効果が見込めるとされる。経団連の担当者も「企業の意思決定には多様性が大事だ」と話すが、男性が要職を占めてきた経営陣の意識改革はなお道半ばだ。ある建設会社の役員は「女性活躍に向けた取り組みを始めたのは数年前から」と明かす。
最近では現状を変える試みが投資家サイドから増えている。三井住友DSアセットマネジメントはプライム上場企業に対し、取締役の10%以上を女性にするよう要請。条件を満たさなかった東レやJR東海の6月の定時株主総会では、取締役選任議案の一部に反対した。こうした取り組みは他の機関投資家にも広がる。
東大大学院の山口慎太郎教授(労働経済学)は、女性役員を増やすには外部登用に加えて人材育成が重要だと指摘する。「コストの増加につながっても、5~10年先を見据えた投資と考えるべきだ」と話す。
(共同通信社)