遺伝情報での労働差別禁止 厚労省、法解釈を明確化

 病気の治療などに用いられる個人の遺伝情報を基にした差別の禁止について、厚生労働省が、労働分野の法解釈を明確化したQ&A形式の文書をまとめたことが19日、関係者への取材で分かった。ゲノム医療推進法の施行を受けた措置。今後、企業や労働者に周知する。
 文書によると、企業は採用選考に際し、社会的差別の原因となる恐れのある事項は、業務目的の達成に必要不可欠である場合などを除いて収集してはならず、遺伝情報は同事項に含まれる。違反は職業安定法に基づく行政処分の対象になる可能性がある。
 労働者が会社からゲノム情報を提出するよう求められたケースについては、個人情報保護法や労働安全衛生法を根拠に挙げ「求めに応じる必要はない」と明記。提出しないことを理由に企業が人事評価を低くするなどの取り扱いをすることは不適切だとした。
 労働契約法では、客観的な合理性がなかったり、社会通念上、相当でなかったりする解雇は権利の乱用に当たると説明。「ゲノム情報そのものは解雇の合理的理由になるとは考えられない」とし、ゲノム情報以外の理由がない限りは解雇権の乱用で無効になるとした。
 遺伝情報を採用選考に使うような差別の禁止に関し、塩崎彰久厚労政務官は今年6月の衆院厚労委員会で「政府の考えを速やかに明確化し公表したい」と述べていた。
(共同通信社)