労働者の病気やけがを国が労災と認定した際、事業主が不服を申し立てることができるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(堺徹裁判長)は4日、「労働者の迅速かつ公平な保護という労災保険法の趣旨を損なう」として事業主の不服申し立てを認めない初判断を示した。裁判官5人全員一致の結論。
不服申し立ての権利を認めた二審東京高裁判決を破棄し、事業主の訴えを却下した一審東京地裁判決が確定した。
病気やけがをした労働者や遺族は、労働基準監督署に業務との因果関係が認められれば、治療費などの給付を受けられる。労働者と行政の手続きで、事業主は不服申し立てができないとされてきた。一方で労災保険には「メリット制」という仕組みがあり、労災認定されると事業主の保険料負担が増える場合がある。
国は昨年、保険料引き上げについて、労災認定後に別の手続きで事業主が争えるよう運用を変えた。第1小法廷はこの点を踏まえ「事業主の手続きの保障に欠けるところはない」と結論付けた。
原告の一般財団法人「あんしん財団」は「保険料増額という不利益を被る恐れがある」とし、国に職員の労災認定取り消しを求めていた。
(共同通信社)