厚生労働省は3日、公的年金の健全性を5年に1度点検する財政検証の結果を公表した。経済成長が標準的なケースで見ると、現役世代の平均収入と比べた年金額の水準は約30年後に50・4%となり、現在より2割低下する見通し。その後は下げ止まる。政府が掲げる「現役収入の半分以上」の水準は維持されるとしている。国民年金保険料の納付期間を現在の「60歳になるまでの40年」から「65歳までの45年」へ延長する案は優先度が低いとして見送る。
女性や高齢者の労働参加が進み、保険料収入が増えることで年金水準は前回の検証結果より少し改善した。社会保障審議会の部会で今回の結果を報告し、パートら短時間労働者の厚生年金への加入拡大など制度改正の議論を本格化させる。来年の通常国会に関連法案の提出を目指す。
現行制度では、財政状況が安定するまで給付を自動的に抑制する仕組み「マクロ経済スライド」が導入されている。これを前提に今回の財政検証では、実質経済成長率を4パターン(プラス1・6~マイナス0・7%)で想定し、モデル世帯(厚生年金に加入する夫と専業主婦)の年金水準がどのように低下するかを試算した。出生率の変動なども考慮した。
モデル世帯の年金水準は、現役世代の平均手取り収入に対する年金額の割合「所得代替率」で表す。2024年度は61・2%。経済成長が標準的なケースで57年度に50・4%となり、下げ止まる。出生率が低ければ50%を下回る。国民年金部分に限ると36・2%から25・5%へ3割下がる。
高成長の2ケースでは全体で56・9~57・6%。成長率が最も低い場合は30%台となる。
モデル世帯の24年度の年金額は22万6千円。標準的なケースでは57年度に21万1千円となる。一方、現役世代の手取り収入は伸びる見込みのため、金額と比べて代替率は落ち込む。
制度を改正した場合の影響を見る「オプション試算」も実施。厚生年金への加入拡大や、給付を抑制する仕組みの見直しでは、年金水準の底上げ効果が確認された。
(共同通信社)