厚生労働省は28日、仕事によってうつ病などの精神障害を発症し、2023年度に労災認定を受けたのは883件だったと発表した。前年度から173件増加し、統計を始めた1983年度以降の過去最多を5年連続で更新した。自殺や自殺未遂に至ったケースは計79件で、前年度より12件多かった。
23年9月に精神障害による労災の認定基準が改正され、原因項目に追加されたカスタマーハラスメント(カスハラ)による労災は、今回の初集計で52件に上った。うち45件は女性で、顧客から迷惑行為の標的にされやすい傾向を示す結果となった。
厚労省の担当者は労災件数の増加について「精神障害が認定の対象だという周知が進んだほか、心理的負荷の原因となった出来事別の項目が拡充され、労働者が自身のケースを当てはめやすくなったのではないか」としている。
原因別で最も多かったのは「パワハラ」の157件で、前年度から10件増加。「悲惨な事故や災害の体験・目撃」が111件、「セクハラ」が103件、「仕事内容や仕事量の大きな変化」が100件と続いた。業種別では「社会保険・社会福祉・介護」112件、「医療」105件、「総合工事業」57件だった。
精神障害の労災請求は前年度比892件増の3575件で、これも過去最多となった。認定率は34・2%だった。
過重労働による脳・心臓疾患での労災認定は、前年度から20件増えて214件となり、うち死亡(過労死)は前年度より2件多い56件。業種別では「道路貨物運送」の66件が最多だった。
(共同通信社)