本書は、組織心理・組織力学のプロである著者が、「組織で自由に働く人」というキーワードの下、「ポリティカル・スキル」を習得することで、思い通りに人と組織を動かし、仕事の自由度を上げることができる──とするものです。
3部構成のPART1では、「組織で自由に働く人」の極意を分析しています。まず、組織に生息する人間のタイプを「成功者」「殉教者」「背徳者」「愚か者」の四つに分類し、自分のタイプを把握して問題行動を改めることを説きます(第1章)。また、「組織で自由に働く人」は、 “職場に理想を求めず、現実だけを見る” としています。組織とはもともと民主的なものではなく、最も大きな力を持つ者が勝つのであり、「公平さ」へのこだわりは捨てるべきだ、との主張です(第2章)。
さらに、「組織で自由に働く人」は、相手との力関係を見極めていると述べ、組織スキルを高める七つの力を「レバレッジ・ブースター」として挙げていますが、その一つに「距離を置く力」を設定している点が興味深いです(第3章)。PART1の最後では、「組織で自由に働く人」は敵と味方を見分けて利用するが、その際に「友人」「パートナー」「人脈」という三つの仲間を取り込む──とし、また、敵に対処する際の「法則」を示しています(第4章)。
PART2では、「組織の力学」の落とし穴にはまらないためにどうすればよいかを説きます。まず、リーダーを「組織内ゲームの勝者」と位置づけ、組織のゲームを「パワーゲーム」「エコゲーム」「回避ゲーム」の三つのカテゴリーに分類し、それぞれのゲームに勝つ方法を提示しています(第5章)。
また、人は「怒り」「不安」によって自滅していくとして、「私は犠牲者だ」という感情にとらわれることに警鐘を鳴らします。その上で、習慣的な態度や行動を変えるカギとなる、五つのステップを挙げます(第6章)。さらに、「個人の力」とは、肩書や役職ではなく自身の性格や能力にその源泉が求められるとして、自分の力量や自分に影響を与えている要素の分析方法を示しています(第7章)。
PART3では、組織において主導権を握るためにはどうすればよいかを述べます。まず、どのような目標も達成するには十分な力が必要であり、真の力は貢献から生まれるが、見えない貢献は組織内での力を高める効果が全くないので、貢献の「露出度」も意識せよ、としています(第8章)。さらに、誰かに影響を与えるには、自分の言動を意識することが必要で、セルフマネジメント能力を磨き、改善すべき影響力のスキルを検討することを説きます(第9章)。
また、組織内の力関係を全方位的に掌握し、上・横・下に影響力を持つべきであるとし、上司に対するマネジメント法や同僚との付き合い方、部下の導き方についても触れています(第10章)。そして最後に、組織で自由に働く上での “ゲームプラン” の必要性を指摘し、「やめること」「始めること」「続けること」をリストアップし、それらを定期的に見直すことを勧めています(第11章)。
権謀術数をめぐらすことを推奨しているわけではなく、「どれほど才能があっても社内政治を軽んじてしまえば、欲しい結果は得られない」という趣旨の本です。ジェフリー・フェファーの『「権力」を握る人の法則』(2014年/日経ビジネス人文庫)や、ロバート・B・チャルディーニの『影響力の武器[新版] 人を動かす七つの原理』(2023年/誠信書房)などにも通じる内容であり、それらに読み進むのもよいかと思います。
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※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』(有料版)で2024年5月にご紹介したものです
和田泰明 わだ やすあき
和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士
1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒)
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに)
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格
1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー
