「育成就労」法案審議入り 外国人材の長期滞在促す 技能実習転換、労働力確保

 技能実習に代わる外国人材受け入れの新制度「育成就労」創設に向けた技能実習適正化法と入管難民法の改正案が16日、衆院本会議で審議入りした。「人材育成・確保」を目的に、人手不足の分野で外国人労働者を呼び込む。即戦力とされる特定技能水準の人材を育て、長期就労を促す。岸田文雄首相は「労働者としての権利保護をより適切にし、長期にわたり産業を支える人材を確保する」と述べた。
 国内外で人権侵害が問題視された技能実習から転換を図るが、受け入れの枠組みは維持しており、立憲民主党の鈴木庸介氏は「問題を本質的に解決できるか大いに疑問だ」とし、共産党の本村伸子氏は「外国人労働者を守れない。看板のかけ替えではないか」と指摘した。
 技能実習は、発展途上国に技術を伝える国際貢献を掲げながら、実態は労働力の確保手段として機能。賃金未払いやハラスメントが一部で起き、失踪者も続出した。育成就労では労働力として受け入れる。技能実習では原則禁止されていた、同じ業務分野で職場を変える「転籍」も認める。
 転籍は、一つの職場で1年を超えて働き、一定の技能や日本語能力を条件とした。賃金の高い都市部に人材が集中するとの懸念に配慮し、当面の間は分野ごとに最長2年まで転籍を制限できる。
 悪質なブローカーを排除するため、転籍手続きへの民間業者の関与を禁止。不法就労者の雇用やあっせんを取り締まる「不法就労助長罪」の法定刑も引き上げる。国内で外国人の受け入れを仲介する監理団体は「監理支援機関」との名称で存続。外部監査人を設置し、中立性向上を図る。
 育成就労は、最長5年働ける特定技能1号水準の人材を3年間で育てる。熟練技能を要する特定技能2号に移れば事実上永住も可能になるため、政府は永住者の増加を見込み、納税などの公的義務を故意に怠った場合は永住許可を取り消せるようにする。
(共同通信社)