政府は15日、技能実習に代わる外国人材受け入れの新制度「育成就労」創設に向けた技能実習適正化法と入管難民法の改正案を閣議決定した。今国会に提出し、成立すれば2027年にも新制度が始まる。現在12分野で受け入れ、外国人材を即戦力と位置付ける特定技能と対象分野をそろえて移行しやすくし、中長期的な就労を促す。
小泉龍司法相は閣議後記者会見で「外国人材に長く日本で働きスキルアップしてもらう。大事なポイントは人権侵害の防止で、共生社会を実現するため非常に重要な法案だ」と述べた。
技能実習は、発展途上国に技術を伝える国際貢献をうたいながら、実態は労働力の確保手段として利用された。賃金未払いや暴力・ハラスメントが一部で起き、失踪者も続出した。
こうした問題を踏まえ、育成就労は、目的を「外国人材の育成・確保」と明記。技能実習では原則禁止されていた、同じ業務分野で職場を変える「転籍」も認める。一つの職場で1年を超えて働き、一定の技能や日本語能力を条件とした。地方から賃金の高い都市部へ人材が流出するとの懸念に配慮し、当面の間は分野ごとに最長2年まで転籍を制限できるとした。
悪質なブローカーを排除するため、転籍手続きで民間業者の関与は認めない。不法就労者の雇用やあっせんを取り締まる「不法就労助長罪」の法定刑も引き上げる。
技能実習で外国人の受け入れ仲介を担う非営利の監理団体は「監理支援機関」と名称を変更。外部監査人の設置を義務付けるなどして独立・中立性を高める。受け入れ先などを監督する外国人技能実習機構は「外国人育成就労機構」に改め、外国人の支援・保護を強化する。
育成就労は、一定の技能があり、最長5年働ける特定技能1号水準の人材を3年間で育てる。熟練技能を要する特定技能2号に移れば、事実上永住も可能になる。政府は将来的な永住者増加を見込み、納税などの公的義務を故意に怠った場合は永住許可を取り消せるようにするなど、入管難民法を見直す。
(共同通信社)